竹内涼真と鈴木亮平にツッコミ多発注意報! 愚直な親子の掌で転がされる『テセウスの船』の楽しみ

『テセウスの船』はツッコミ劇場

 しかし、もちろんこうした姿に本気でイライラしている視聴者も一部にはいるものの、不思議なことに、多くの視聴者は苦笑&爆笑しつつも、温かい目で見守り、彼らを心配し、応援し続けている。

 そうした視聴者たちの姿は、ほとんどザ・ドリフターズのコント「志村! うしろ、うしろ~!」状態である。あるいは、本気で心配している様は、母のようですらある。

 毎度毎度鼻を真っ赤にし、目をウルウルさせて、走り回っては、泣いてばかりの竹内涼真の健気な姿は、ちょっとおバカな小犬のようである。また、おおらかで優しい父・鈴木亮平との親子の姿は、大型犬と小型犬の戯れのようでもある。

 底抜けの愚直さで、全視聴者を「志村! うしろ、うしろ~!」の子どもたち状態にしたり、老若男女問わず皆の母性を引き出しまくったりする竹内涼真。マイケル・J・フォックスが31年前の音臼村にタイムスリップしたとしても、視聴者はこうも盛り上がらなかっただろうし、何なら事件はあっさり解決してしまうかもしれない。

 しかし、それこそが心さん。スマホやICレコーダーなど便利なものが当たり前にある現代では、物語が起こりにくい。そんな状況下で壮大な物語を巻き起こし、紡いでいけるのは、自らがトラブルを生み続ける心さんのように、果てしなく素直さで真っすぐで、愚直で、うっかりで、その分、愛され力だけが著しく高い、頼りないヒーローなのかもしれない。

 ちなみに、そんな新時代のうっかり愛されヒーローは、かなり確信的に作られていることが、番組公式Twitterでのつぶやきやイジリによってわかる。3月1日には、鈴木亮平演じる父・文吾の構成、演出、カメラアングルによる「テセウスの船番外編」がアップされていた。

 そこでは文吾&心さん父子が番組放送まであと1時間という告知で、「なんでだ~っ!」「うそだろ……(溜息)」「くっそ~! みきお~!」と膝をこぶしで叩き、焦り、悔しがり、セルフパロディともいえる熱い芝居を繰り広げ、盛大に本作の世界観を遊んでいた。

 つまり、どこまでも頼りなくて真っすぐで愚直でポンコツで愛らしい心さん・文吾父子にハラハラ&イライラさせられ、応援に力が入ってしまう我々視聴者は、完全に作り手とキャストの掌で転がされているということだ。

 3月15日放送分からはほぼオリジナル展開となる『テセウスの船』。残りあとわずか、制作陣とキャストたちの掌で転がされる楽しみを味わいたい。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
日曜劇場『テセウスの船』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:竹内涼真、榮倉奈々、安藤政信、貫地谷しほり、芦名星、竜星涼、せいや(霜降り明星)、今野浩喜、白鳥玉季、番家天嵩、上野樹里(特別出演)、ユースケ・サンタマリア、笹野高史、六平直政、麻生祐未、鈴木亮平
原作:東元俊哉『テセウスの船』(講談社モーニング刊)
脚本:高橋麻紀(「高」はハシゴダカが正式表記)
演出:石井康晴、松木彩、山室大輔
プロデューサー:渡辺良介、八木亜未
製作:大映テレビ、TBS
(c)TBS

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