「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『酔うと化け物になる父がつらい』

「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『酔うと化け物になる父がつらい』

 観始めたときは、「なんて救いのない映画なんだ」と驚きました。実際、主人公のサキもそんな父に明確な反抗の意思を見せるわけでもなく、何が起きても「仕方ない」と思っているようにも見えます。母がいなくなった後お酒を控えるようになった父も、しばらく経つとボジョレー・ヌーヴォーの解禁とともに、自身もお酒を解禁します。

 それでも、そんな光景から目を逸らさずに誠実に映し続けることこそが、リアルを撮るということなのかもしれません。いくら努力しても歯車を正常に戻すことはできないし、それでも回り続けるのが、現実です。お父さんも、完全な悪役ではなくお酒の過ちを噛み締めながら、それでもやめられない苦しさを抱えています。

 そんな本作の現実感に大きく貢献しているのが、サキを演じた松本穂香さんです。昨年から『おいしい家族』『わたしは光をにぎっている』と主演作が続き、今年の秋には角川春樹の最後の監督作『みをつくし料理帖』でも主演を務める松本さんですが、日常に諦めを感じつつも、それでも現状の不満をどうすればいいのかわからない、そんな葛藤抱えながらスクリーンの中に確かに生きていました。だからこそ、サキが父に今まで抱えてきた激情をぶつけるシーンは本作の白眉であり、一見の価値ありです。

 先ほど「救いがない」と言いましたが、本作の最初と最後でサキが流す涙は、本作を象徴しています。その涙の解釈を、映画が終わった後も噛み締め続けることこそが、この映画の“救い”であり、私たちの日常と地続きになっている、外に拓けた作品であると感じるのです。

■公開情報
『酔うと化け物になる父がつらい』
新宿武蔵野館ほかにて公開中
出演:松本穂香、渋川清彦、今泉佑唯、恒松祐里、濱正悟、安藤玉恵、宇野祥平、森下能幸、星田英利、オダギリジョー、浜野謙太、ともさかりえ
監督:片桐健滋
脚本:久馬歩(プラン9)、片桐健滋
原作:菊池真理子『酔うと化け物になる父がつらい』(秋田書店刊)
制作プロダクション:CREDEUS
制作:よしもとクリエイティブ・エージェンシー、MBS
製作:「酔うと化け物になる父がつらい」製作委員会
配給:ファントム・フィルム
(c)「酔うと化け物になる父がつらい」製作委員会
公式サイト:http://youbake.official-movie.com
公式Twitter:@youbake_movie
公式Instagram:@youbake_movie

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