濱津隆之が車中泊を駆使して小旅行 『絶メシロード』に詰まった“かわいいおじさん”像

『絶メシロード』濱津隆之がかわいい

「週末、私はちょっとした旅に出る。ひとりだけの時間を満喫できる、私の小さな大冒険」

 それにしても、須田民生を演じる濱津隆之は可愛い。OPとEDには愛車ホンダFREED+の中で膝を組んでいる姿が映し出される。これがまたかわいい。スタッフたちはわかってやっている。

 ひげのおじさんを手放しで「かわいい」と呼ぶことができるのは、むろん演者としての濱津の魅力が大きいのだが、同時に主人公・須田民生の行動にも裏づけされている。それが表れているのが、ドラマの中で繰り返し語られている彼の「小さな大冒険」の3つのルールだ。

その1 期間は金曜の帰宅後から翌日、妻たちが家に帰る土曜日の夕方まで。
その2 誰も誘わない。誰も巻き込まない。
その3 高速代、ガソリン代、食費、いろいろ含め、小遣いの範囲内に収める。

 家族に心配をかけないし、金銭的な負担もかけない。旅先での異性との出会いやときめきなどにも期待しない。今となっては信じられないが、かつて大人の男性が週末に不倫旅行をするためのガイドブックが刊行されていたことがあった。民生のルールはそこから100万光年離れている。妻に「やましいことしてるわけじゃないんでしょ?」と言われても、即座に心から否定できるし、妻もそれを信じてくれる。民生は気が弱くて優しいだけじゃない。ちゃんと自分を律しているのだ。

 まさに人畜無害。それに、なんといっても人柄がいい。部下が困っていたら助け、嫌なことがあっても恨まない。誰にも迷惑をかけず、ひとりで伸び伸びと趣味を楽しむ。自分の「好き」を追求しつつ、妻や娘の「好き」も尊重する。これが今の時代に求められている「かわいいおじさん」像だろう。セクハラ、パワハラ、不倫を繰り返しているような偉そうなおじさんは、いつか時代からも社会からも家族からも見放されて孤独のまま死ぬ。

 なお、演じている濱津も民生と共通点が多いようで、「基本的には自分が思った通りに演じていました」とインタビューで語っている(TV LIFE 2020年1月10日)。プライベートでも休日は誰かを誘うことなく、ひとりで過ごすことが多いらしい(kufura 2019年3月1日)。

 これからは須田民生、つまり濱津隆之のようなかわいいおじさんの時代だ。いや、もうそんな時代がもうそこまで来ている。

■大山くまお
ライター・編集。名言、映画、ドラマ、アニメ、音楽などについて取材・執筆を行う。近著に『バンド臨終図巻 ビートルズからSMAPまで』(共著)。文春オンラインにて名言記事を連載中。Twitter

■放送情報
ドラマ25『絶メシロード』
テレビ東京系にて、毎週金曜深夜0:52〜1:23放送
ひかりTV、Paraviにて、毎週金曜23:00〜配信 ※放送1週間前から先行配信
出演:濱津隆之、酒井若菜、西村瑠香(青春高校3年C組)、長村航希、野間口徹、山本耕史
原案:『絶メシリスト』(博報堂ケトル)
演出:菅井祐介、古川豪、小沼雄一、原廣利
脚本:森ハヤシ、村上大樹、家城啓之
音楽:河野丈洋
主題歌:スカート「標識の影・鉄塔の影」(PONY CANYON)
プロデューサー:寺原洋平、畑中翔太、田川友紀
制作:テレビ東京/テレコムスタッフ
製作著作:「絶メシロード」製作委員会
(c)「絶メシRoad」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/zetsumeshiroad/
公式Twitter:@zetsumeshiroad

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