『スカーレット』作品との対話に“新たな気づき”が起きるのか? 一風変わったアンリの存在感

『スカーレット』“新たな気づき”は起きるか

 喜美子(戸田恵梨香)の作品を是が非でも買いたい小池アンリ(烏丸せつこ)がやってきた前回。『スカーレット』(NHK総合)第113話では、喜美子とアンリが打ち解ける姿が描かれた

 非売品だと言っても引き下がろうとしないアンリを追い返すための喜美子の攻防は続く。800万円と大きく出た喜美子だったが、それでもアンリは800万円を持ってかわはら工房にやってきた。

 何とかアンリを説得し、購入を諦めてもらったが、「手に入れるのは諦めたんで聴かせてもらうだけでええんです。よろしい?」とアンリは突拍子もないお願いを始める。いわく優れた芸術品は、作品そのものがおしゃべりをするとのこと。一見とんでもないことを言っているように感じるが、創作を続ける喜美子には、その過程で作品を通して自問自答をする覚えがあり、そのことと結びつけて納得したようだった。

 喜美子の作品からは音楽が聞こえるというアンリ。工房にある作品を片っ端から確認してまわり、楽しそうに作品の音を聞いていく。その姿を見た喜美子も「これは?」と次々に作品を見せてまわり、反応を楽しむ。喜美子にとって、自分の作品をここまでして評価してくれる人の存在は貴重だ。お金を貯めて買いたいと言ってくれた掛井武蔵丸(尾上寛之)をはじめ、喜美子の作品を喜んで楽しみにしている人たちがいる。喜美子1人になってしまった川原家だが、陶芸家・川原喜美子は多くの人に囲まれて過ごしていることを感じさせる。アンリの作品を音として捉える感覚は、喜美子にとってきっと重要な役割を担うのだろう。

 一方、窯業研究所に通い出した武志(伊藤健太郎)は、照子(大島優子)の息子・竜也(福崎那由他)と出会う。小さい頃、野球をした仲だというが、どうやら武志があまり運動が得意ではないせいで、尊敬はされていなかったようだ。武志は竜也に掃除を教える。初めての環境で、積極的に振る舞いなどを教えてくれる存在は非常にありがたい。ひとりっ子の武志だが、こうして人の心の隙間にスルッと入っていく才能は、喜美子のものを受け継いでいる。

 父・敏春(本田大輔)からのプレッシャーから高校を辞めてしまった竜也。親の愛が裏目に出てしまったすれ違いで、竜也の今があるようだが、武志とのやりとりを見ている限り、雪解けの日はそう遠くないように思える。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『スカーレット』
NHK総合にて、2019年9月30日(月)~2020年3月放送予定
出演:戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、佐藤隆太、大島優子、林遣都、財前直見、マギー
水野美紀、溝端淳平、木本武宏、羽野晶紀、三林京子、西川貴教、松下洸平、イッセー尾形 ほか
脚本:水橋文美江
制作統括:内田ゆき
プロデューサー:長谷知記
演出:中島由貴、佐藤譲
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/scarlet/

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