『スカーレット』ヒロインの波乱万丈ぶりが強烈 女性P×女性脚本家が“シビアな目線”で作る朝ドラ

女性P×女性脚本家による朝ドラの生々しさ

 日々、生きることが楽でないことを強烈に、シビアに突き付けてくる戸田恵梨香主演の朝ドラ『スカーレット』(NHK総合)。

 家が貧乏であるために、中学卒業後に大阪に働きに出たり、安い給料を補うために1足12円でストッキングを繕い、美術学校に通うために頑張って貯めたお金を、家の借金返済のために使ったり。火鉢の絵付師として歩み始めてからも、結婚して自分の陶芸作品が売れてからも、夫の作品が金賞を受賞し、冷蔵庫が買えたり、夜食におにぎりが登場するようになったりしてからも、暮らし向きがさほど良くなる気配はないまま。

 おまけに、夫の作品に良い刺激になればと受け入れた弟子が、夫に恋心を抱いてしまったり、ずっと頼りなく見えた母親が一生懸命貯めてきてくれたお金に支えられ、高額を投じて作った穴窯がようやく完成するも、思うような色が出ずに作品は何度も失敗したり。挙句、穴窯での創作をいったん休むことを提案する夫と意見が衝突し、夫は家を出てしまい、穴窯を諦められない喜美子は借金までして……という展開に。

 あまりの世知辛さに、「大阪・荒木荘での楽しかった日々を返してほしい」と思ったり、柔道絵付けの師匠・フカ先生(イッセー尾形)の再登場を願ったり、幼少期や創作活動において多大な影響を与えた「草間流柔道さん」(佐藤隆太)やジョージ富士川(西川貴教)、幼なじみの癒しキャラ・信作(林遣都)&照子(大島優子)の登場シーンをもっと増やしてほしいと思ったりしている視聴者も少なくないのではないだろうか。

 しかし、イージーに進まない、ときには努力も報われない、生々しくシビアで残酷な展開こそが、女性CP(チーフプロデューサー)×女性脚本家という「女性作り手タッグの朝ドラ」の大きな特徴ではないかと思う。

 かつては男性ばかりだったテレビの世界。それは、様々な家族の姿を通して「女性の半生もしくは一代記」を描いてきた朝ドラにおいても同様であり、自分が拙著『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)を刊行した2012年時点では、女性初プロデューサーだった『おしん』『はね駒』の小林由紀子さん(当時・岡本由紀子さん)をはじめ、朝ドラの女性プロデューサーは『あぐり』(浅野加寿子さん)、『おひさま』(小松昌代さん)、『梅ちゃん先生』(岩谷可奈子さん)の4人だけだった。

 以降、現在の『スカーレット』に至るまで、女性のCPは『ごちそうさん』(岡本幸江さん)、『半分、青い。』(勝田夏子さん)、そして『スカーレット』のみ。

 これまでの歴史を考えると、2010年代以降は女性CPが確実に増えている。とはいえ、まだまだ少ない中で、さらに女性脚本家×女性CPのタッグとなると、先述の『おしん』、『はね駒』のほか、『ごちそうさん』、『半分、青い。』、そしてこの『スカーレット』だけなのだ。

 メインの作り手に男性目線が入ると、「みんなに愛される、明るく元気で健気なヒロイン」になったり、「誰かが救ってくれる優しい物語」になったりすることが多い。しかし、女性CP×女性脚本家の場合は、現実から決して目を逸らさず、突き付けてくる厳しさ・残酷さがある。

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