“テレビの王者”がストリーミング戦争時代を生き抜く勝算は? HBOの躍進と日本での課題
動画配信サービスのシンボルを目指す
日本ではHBO作品そのものの認知度向上が課題となる中、本国アメリカでは動画配信サービスとして2025年までに加入者数5000万人を目指すHBO Max。加入者数だけでなく、Netflixが動画配信サービス業界を牽引しているのは、ドラマだけではないオリジナル作品を中心とした配信作品のバラエティ豊かさと、テック企業ならではのアプリの使いやすさ等が大きな理由だが、そこにも風穴を開ける勢いだ。
HBOはもともと、インターネットでHBOを視聴できる動画配信サービスとしてHBO Nowを保有しているが、2019年第四クォーターでの動画配信サービスアプリダウンロード数のシェアは8%に留まっている(ちなみにNetflixは15%、Huluは8%という実績の中、Diney+が16%と初登場でNetflixを抜いていることも見逃せない)。コンテンツとアプリ自体の機能の優位性を勝ち取り業界を牽引するのが狙いとも言える。
コンテンツでいえば、今年の5月にHBO Maxとして生まれ変わり、先ほど述べたようなAT&T傘下の大手メディアの作品も配信可能になったことで、番組のラインナップは確実に増える。加えて、長年人気のドラマ『フレンズ』や『ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則』『セサミストリート』などの配信権を獲得し動画配信サービスに馴染みのない客層も狙う。今後、ドラマ以外の新作として、国民的人気コメディアン、エレン・デジェネレスとのバラエティ番組製作、2018年#Metoo運動の一翼を担いピューリツァー賞を受賞したジャーナリスト、ローナン・ファローとのドキュメンタリー製作なども控えている。
さらにアプリの機能でいえば、ローンチ前から他社と差別化された機能に注目が集まっている。モバイルアプリは、人気俳優が作品をキュレーションし紹介する機能、HBO Maxに加入している友人と同時視聴できる機能、そしてPodcastも備える予定だ。特に各動画配信サービスでは、配信作品が多くなる一方ユーザーとしてはその作品を観るか決めかねてしまうため、キュレーション機能はユーザーの感想が気になるところ。ワーナーメディアのCTOジェレミー・レッグは「象徴であることが最も重要だ」と語っている。動画配信サービスの象徴としてのHBO Maxとなるには、単発のユーザーではなく継続的に加入するユーザーの獲得が課題となるのは明確だ。これは何もHBO Maxに限った話ではない。ヴァラエティ誌によれば2019年にエンターテインメント企業はオリジナル作品製作にかけた金額はなんと1210億ドル。内ディズニーが27.8億ドル、Netflixは15億ドル、AT&Tは14.2億ドルだそうだ。多額の資金をかけ、各社が継続的な加入者獲得のためオリジナル作品でしのぎを削る。冒頭に述べたようにポン・ジュノ監督のような実力のあるクリエーターとの契約争奪戦もその一部だ。オリジナル作品製作からアプリそのものの機能まで追求する姿勢は、テレビドラマのHBOから、動画配信サービスとしてのHBOとして生まれ変わる強い意気込みが伺える。HBOからNetflixへ移籍したマーケティング部門の重役ピア・チャオゾン・バーロウ(HBO在籍時に『ガールズ』や『シリコンバレー』『ニュースルーム』などを輩出)のHBOマーケティング部門への復帰も決定しており、今年は本気で動画配信サービスの象徴になるべく勝負をかけるHBOに、業界からの熱い視線が集まる1年となりそうだ。
参考
・https://fortune.com/2019/04/15/game-of-thrones-season-8-premiere-record-viewers/
・https://www.finance-monthly.com/2019/05/how-much-money-has-hbo-made-from-game-of-thrones/
・https://www.hbomax.com/
・https://screenrant.com/streaming-services-netflix-disney-plus-hbo-hulu-cost/
・https://www.hollywoodreporter.com/news/at-t-forecasts-50-million-hbo-max-domestic-subscribers-by-2025-1250396
・https://variety.com/2020/biz/news/2019-original-content-spend-121-billion-1203457940/
・https://note.com/takakimoto/n/nec4b9772d577
・https://www.broadcastingcable.com/news/chaozon-barlow-rejoins-hbo-max-from-netflix
・https://deadline.com/2020/01/warnermedia-hbo-max-mobile-interface-ces-distribution-bundle-hbo-1202823751/
・https://variety.com/2019/digital/news/hbo-max-podcasts-coviewing-human-curation-1203387597/
・https://www.vanityfair.com/hollywood/2020/01/studio-ghibli-netflix
・https://www.indiewire.com/feature/hbo-series-2020-new-returning-shows-the-outsider-westworld-euphoria-1202199881/
・https://techcrunch.com/2020/01/14/disney-was-the-most-downloaded-app-in-the-u-s-in-q4-2019/
・https://www.hollywoodreporter.com/news/bong-joon-ho-says-parasite-series-will-explore-stories-happen-between-sequences-film-1269871
■キャサリン
Netflix、Amazonプライムビデオ等のストリーミングサービスで最新作を追いかける海外テレビシリーズウォッチャー。webメディアなどで執筆。
note:https://note.mu/hitoto04
Twitter:https://twitter.com/Hitomi_forward
■配信・放送情報
『ウエストワールド シーズン3』(全8話)※世界同時配信&放送
【字幕版】
・スターチャンネルEXにて、3月16日(月)より毎週月曜10:00更新
・BS10 スターチャンネルにて、配信と同時放送
出演:エヴァン・レイチェル・ウッド、テッサ・トンプソン、アーロン・ポール、ヴァンサン・カッセル
製作総指揮:J・J・エイブラムズ、ジョナサン・ノーラン
製作総指揮・監督・脚本:ジョナサン・ノーラン
『アウトサイダー』
・スターチャンネルEXにて、4月よりスタート
・BS10 スターチャンネルにて、4月よりスタート
原作:スティーヴン・キング『The Outsider(原題)』
スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS:https://www.amazon.co.jp/channels/starch
BS10 スターチャンネル:http://www.star-ch.jp