柄本佑、たった一言でドラマを動かす声と色気 30歳を過ぎてにじみ出る人間的な魅力

柄本佑、30歳を過ぎてにじみ出る人間的な魅力

 一方、全4話で放送される『心の傷を癒すということ』は、阪神・淡路大震災から25年を機に制作されたドラマであり、自らも被災しながら被災者の心のケアに努めた精神科医・安克昌氏をモデルに描くヒューマンドラマ。第1話では自らのアイデンティティに苦しみながら医学部へ進んだ安が、終子(尾野真千子)と出会って結婚し、第1子も誕生して心穏やかな日々を送る最中、大地震が発生するまでが描かれた。第2話では被災地の人々を目の当たりにした安が、精神科医としてできることは何かを模索していく。

『心の傷を癒すということ』(写真提供=NHK)

 今では日本でもPTSD(心的外傷後ストレス障害)という言葉が知られるようになったが、安氏は、その研究の先駆者になった人だ。教科書がないなか、手探りながら多くの被災者に寄り添った安氏。「調子はどうですか?」と声をかける柄本演じる安、祖父がまだ見つかっていない少年に「そうか」と頷くその姿に、在りし日の安氏が浮かぶ。

 まとう空気だけでなく、柄本は、その声でも人を惹きつけている。「そうだ 京都、行こう。」のフレーズで有名になったJR東海のCMナレーションも、長塚京三から柄本が引き継いでいるが、長塚のような強い個性はないものの、柔らかで温かみのある柄本の声は耳に心地良く、2代目としての責任を果たしている。

 直木賞作家、島本理生の原作を『幼な子われらに生まれ』の三島有紀子監督が夏帆と妻夫木聡主演で映画化した恋愛映画『Red』も、さらに柄本のファンを増やしそうだ。一流商社勤務の夫がいながら、かつて愛した男と再会したことで、思いを止められなくなる塔子を夏帆が演じ、10年ぶりの再会を果たした秋彦を妻夫木が演じている。無意識のうちに塔子を追い詰めてきた夫の真には間宮祥太朗。柄本は塔子が働き始める設計事務所の営業・小鷹役だ。初対面の塔子をいきなり口説きにかかる軽い男と思いきや、ここでも柄本は「色気」伴う包容力を発揮。さほど多くはない出演シーンながら、きっちりと印象を残してみせる。

 もともと目指していた映画監督という夢を、今も抱き続けているという柄本。その夢の実現も見てみたいが、今は役者・柄本佑の稀有な魅力にただただ浸りたい。

■望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。

■放送情報
水曜ドラマ『知らなくていいコト』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、重岡大毅(ジャニーズWEST)、秋吉久美子、佐々木蔵之介、小林薫、本多力、小林きな子、和田聰宏、山内圭哉、関水渚、森田甘路、今井隆文ほか
脚本:大石静
演出:狩山俊輔、塚本連平ほか
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:小田玲奈、久保田充、大塚英治(ケイファクトリー)
(c)日本テレビ

土曜ドラマ『心の傷を癒すということ』
NHK総合にて、2020年1月18日(土)から2月8日(土)21:00〜21:49放送
(毎週土曜日・全4回)
出演:柄本佑、尾野真千子、濱田岳、森山直太朗、趙珉和、浅香航大、上川周作、濱田マリ、平岩紙、石橋凌、キムラ緑子、近藤正臣ほか
作:桑原亮子
音楽:世武裕子
制作統括:城谷厚司
プロデューサー:京田光広、堀之内礼二郎、橋本果奈 
演出:安達もじり、松岡一史、中泉慧

■公開情報
『Red』
2020年2月21日(金)新宿バルト9ほか全国ロードショー
出演:夏帆、妻夫木聡、柄本佑、間宮祥太朗
監督:三島有紀子
原作:島本理生『Red』(中公文庫)
脚本:池田千尋、三島有紀子
企画・製作幹事・配給:日活
制作プロダクション:オフィス・シロウズ
企画協力:フラミンゴ
(c)2020『Red』製作委員会
公式サイト:https://redmovie.jp/

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