『パラサイト 半地下の家族』はポン・ジュノ監督の過去作と何が違う? 「異物=人間」が煽る不安

『パラサイト』とポン・ジュノ過去作を比較

 誰かは誰かの「異物」になるし、「異物」と「異物」の間では何が起きるか分からない。そして知らないうちに取り返しのつかない事態を引き起こす。『パラサイト』はこうした現象への普遍的な不安の塊だ。人間と付き合う全ての人、社会に生きている全ての人にとって、本作は不気味な味わいを残す忘れ難い映画となるだろう……と、こうして書くと地獄みたいに辛い映画だと思うかもしれないが、もちろんポンさんらしいユーモアも健在だ。

 役者たちの熱演も見どころで、特に印象に残るのはキム一家の娘を演じたパク・ソダム。あの名優ソン・ガンホ以上の存在感を発揮して、映画を力強く牽引していく(実際、キム一家を引っ張るのは彼女だ)。堂々とウソをつき、不敵な表情でタバコを吹かし、酒瓶をラッパ飲みしながら、今にも壊れそうな繊細な表情を垣間見せる。彼女の完璧な演技には思わずため息が漏れる。もちろんガンホも得意のダメ親父役で魅せてくれるし、チャン・ヘジン演じる砲丸投げの選手だったというパワフルな母や、チェ・ウシクの明らかに間違った方向に真面目な息子など、こうしたキャラクターたちの掛け合いは魅力的で、非常に危うい状況にも関わらず思わず吹き出してしまう。これこそまさにポン印だ。ポンさんの描く地獄は、いつだって傍から見ると笑えて、少し幸せなのだから。

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿しています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■公開情報
『パラサイト 半地下の家族』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン
監督:ポン・ジュノ
撮影:ホン・ギョンピョ
音楽:チョン・ジェイル
提供:『パラサイト半地下の家族』フィルムパートナーズ
配給:ビターズ・エンド
2019年/韓国/132分/2.35:1/英題:Parasite/原題:Gisaengchung/PG-12
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