「喜美子の横にいるのはしんどいな」漏れ出た八郎の本音 『スカーレット』が描く“才能”の残酷さ

『スカーレット』が描く“才能”の残酷さ

 『スカーレット』(NHK総合)第14週「新しい風が吹いて」では、喜美子(戸田恵梨香)と八郎(松下洸平)の間に少しづつ生まれていた亀裂がついに“声”となって露わになる。

 昭和44年、八郎は金賞を受賞してから3年が経ち、いまだに自分の過去の作品を超えられずにいた。銀座で個展の開催が決定し、生活は以前よりも安定はしていたが、八郎の中で息苦しさは日に日に増していく。

 ある日、かわはら工房に新しい風が吹く。弟子入りを志望しやってきた三津(黒島結菜)。美大出身で芸術一家、明るくものおじしない性格の彼女は、八郎にもどんどん意見をぶつけていく。「大胆に土を替えてみては」「新しいものを取り入れたら先生の作品は変わります」。進化せずに落ち着いてしまったと上から評価された八郎は陶芸の道に迷い、さらには信楽への強いこだわりが自身を苦しめていた。

 「壊したらええんよ。縛られてるから。壊そうや、一緒に」。喜美子からの提案にも「僕と喜美子はちゃうで。違う人間や」と突っぱねる八郎。そんな時、八郎の心に響いていたのが三津が何気なく明かした元彼・さそり座のヒロシの話だった。ヒロシは、益子焼の師匠に学びながら自ら作品も発表し奨励賞も取っている、閃き型の天才肌。不器用な三津はヒロシから「君も頑張れ」と言われ出来ない自分に余計に腹が立ち、「才能のある人は無意識に人を傷つける」と思った。

 その境遇は八郎と喜美子の関係性とも同じだ。八郎が三津、喜美子がヒロシ。喜美子にコーヒーカップの注文が入ったり、ちや子(水野美紀)が女性陶芸家として作品を作ることを強く勧めたりと、以前から予兆はあった。八郎の中でそれが確信に変わったのは、喜美子が釉薬のこと、調合のことを2年半の間で勉強し、追いついてきた時だろう。「豊富な知識に裏打ちされた自由奔放な作品ほど怖いもんはない」。ついに喜美子は独自の作品を作り始める。八郎が行き詰まっているのを励まそうとしている。一緒に前へ進もう。才能のある喜美子の行動、言葉は、八郎を知らず知らずのうちに傷つけてしまっていたのだ。

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