年末企画:藤原奈緒の「2019年 年間ベストドラマTOP10」 テレビドラマを追いかけることは「時代」を見つめること

藤原奈緒の「2019年ドラマTOP10」

 『凪のお暇』は、空気を読むことをなによりの美徳とする現代人が抱え持つ生きづらさを、大島凪(黒木華)と坂本龍子(市川実日子)という、時代が違えば世界でも変えそうな名前を持つ2人と、慎二(高橋一生)という愛すべき厄介な男を通して描いた。

 『これは経費で落ちません!』、『わたし、定時で帰ります。』は実によくできた、新しいお仕事ドラマだ。現代における仕事との向き合い方を考えさせると共に、多部未華子、吉高由里子演じるヒロインがとても魅力的であり、恋愛パートも秀逸だった。

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 『腐女子、うっかりゲイに告る。』は傑作ドラマ揃いの、新しく始まったNHK「よるドラ」枠から一本。鮮烈かつ切実な青春の煌きと痛みは何にも変えがたい。『少年寅次郎』(全5話)は、『スカーレット』(NHK総合)の北村一輝演じるお父ちゃんばりに憎めない昭和のダメな父親を演じた毎熊克哉の哀愁に尽きる。

 海外ドラマリメイク、王道シリーズもの等、確実に視聴率をとることを目的としたドラマが乱立する一方で、意欲作も多く見られた。視聴者のテレビとの向き合い方自体が変わり始めている今、それでも見たいと思わせるテレビドラマ作りが求められていると同時に、Netflix、首都圏以外の放送局製作のドラマなど、新たな土壌の可能性も見出され、それが一部ではなく多くの人に浸透したのが2019年だったのではないか。

 そして、新時代の幕開けの年でもあった2019年、多様性を認め合い、自由なライフスタイルが推進される新しい社会は一方で、生きづらさや居場所のなさといった言葉が溢れる社会でもある。そういった現代の姿を、前述したドラマの多くがはっきりと描き出そうとしていた。テレビドラマを追いかけることは、私たちが生きている「時代」を見つめることに繋がる。

 2020年は新たに何が描かれていくのか、楽しみでならない。

【TOP10で取り上げた作品に関連するレビュー】
『いだてん』“俺たちのオリンピック”はどこに?
『凪のお暇』が描く浅ましさと悩ましさ
『きのう何食べた?』なぜ視聴者の心を掴んだのか
『わた定』が社会の本質を射抜くまで
藤野涼子、『腐女子~』で見せる無敵の輝き

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■放送情報
『きのう何食べた?お正月スペシャル』
テレビ東京にて、2020年1月1日(水・祝)22:00〜23:30放送
原作:よしながふみ『きのう何食べた?』(講談社『モーニング』連載中)
出演:西島秀俊、内野聖陽、田中美佐子、マキタスポーツ、山本耕史、磯村勇斗、高泉淳子、チャンカワイ、中村ゆりか、松山愛里、椿弓里奈、山本楽、唯野未歩子、奥貫薫、田山涼成、梶芽衣子
OPテーマ:「帰り道」OAU(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)<NOFRAMES/TOY’S FACTORY>
EDテーマ:「iをyou」フレンズ<ソニー・ミュージックレーベルズ>
脚本:安達奈緒子
監督:中江和仁、野尻克己、片桐健滋
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:佐藤敦、瀬戸麻理子
制作:テレビ東京/エイベックス・ピクチャーズ
製作著作:「きのう何食べた?正月スペシャル 2020」製作委員会
(c)「きのう何食べた?正月スペシャル 2020」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kinounanitabeta/
公式Twitter:https://twitter.com/tx_nanitabe

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