『モトカレマニア』恋人とよりを戻したあとはどうなる? 永遠の「元カレ元カノ問題」を考える

『モトカレマニア』から考える「元カレ元カノ問題」

 ドラマタイトル通り、元カレを忘れられない“モトカレマニア”(MKM)である主人公の七転八倒と成長を描いたラブコメディー『モトカレマニア』(フジテレビ系)。

 主人公の難波ユリカ(新木優子)は27歳独身。5年前に交際していた元カレ・マコチこと福盛真(高良健吾)のことが忘れられず引きずり続ける筋金入りのMKMである。

 その日課はなかなかのもので、毎朝SNSで元彼の名前を検索、マコチと脳内妄想会話。さらには初対面の男性に対し、“モトカレスカウター”なるものを発動させ、マコチとのかすかな共通点を見つけては喜ぶ。よく過去の恋愛への向き合い方について「男は“名前をつけて保存”、女は“上書き保存”」と言われるが、その定説に反してユリカは全く過去を上書き保存できておらず、違った意味で元カレの情報や思い出を日々更新し続けているのだ。

 ただ、その度合いに程度の差こそあれ、元カレ元カノ問題は万人にとって共通の関心事項ではないだろうか。別れた後に思うように新しい恋ができなくて、逃した魚は大きい気がして、たまたまその後バッタリ遭遇した元恋人の成長ぶりに浮き足立って……など打算的な理由も多分に含まれていながら、比較的手の届きやすいところにいる気がして、距離感を誤りやすいのもまた元カレ元カノという関係性ゆえかもしれない。本作に登場する全てのMKMたち(さくら(山口紗弥加)の元カレである和真(淵上泰史)は不明)はピュアに過去の恋人を想い続けている様子で、それはそれで珍しいのではないだろうか。

 元恋人問題で陥りがちな事象その1が、“もしあの時~だったら”という仮定を脳内で無限再生してしまうこと。ユリカのように “決定的な原因”があって別れたのではなく、些細なきっかけからボタンをかけ違い、そのままきちんと話し合いを経ずして別れてしまう……というような恋の終え方の場合には、未練を残す余地が大いにあり、あらゆる仮定のパターンが繰り広げられてしまえる。「きちんとピリオドを打たなかった後悔は幽霊のようにいつまでも付きまといますよ」というユリカの言葉は“元カレゾンビ”に取りつかれていた彼女の本心そのものだろう。どんなに思い返してももう戻れぬ“あの時”に立ち返っては、“もし~だったら”“~していなければ”とどうしようもない仮定形を並べ立てる。そして今とは違う未来が待っていたのかもしれないと一気に落胆する無限ループにはまってしまう。しかし本当に考えるべきは必ずしも「彼と別れなくて済み、今も一緒にいること」ありきでの逆算ではなく、「過去にばかり囚われて終始モヤモヤしている今の自分」ではない自分になるには、あの時どうすべきだったのか、ということだろう。そうすると導き出す答えは自ずと変わってくるのではないだろうか。

 また晴れてユリカがマコチと付き合い直してからも違和感を感じている事象、これにも共感できる人が多いのではないだろうか。「あれ? あの時と違う」「あの時に戻ったみたい」とかつて付き合っていた当初を基準に現在進行形で進んでいる恋愛を答え合わせしてしまう。2人は再度付き合うという選択をしたものの、反対に元恋人やかつて好きだった人と再会して幻滅したという経験を持つ人も少なくないだろう。元恋人も自分も流れた月日の分だけ変わっていて当然で、“あの時の相手”に“あの当時の自分”で“あの時身を置いていた環境”だったから惹かれたのであって、これら3要素が同時成立しない限り「あの時と同じ」は起こり得ないのである(そしてこの3要素が同時成立する瞬間はほぼほぼ確実にもう来ない)。その極みにいるのがさくらであって、学生時代の初恋を、何もかもが変わってしまった今になってなぞってみるのは、最初こそ懐かしさやときめきを伴うもののなかなかに互いにとって残酷な行為である。いくら過去に好き合っていた時間があろうとも全てがリセットされているものだと言い聞かせ、元恋人には向き合った方が良いだろう。また相手が変わってしまったことを嘆く前に、自分自身だって変化している可能性を疑ってかかるべしである。

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