『午前0時、キスしに来てよ』にみる、“おとぎ話”としてのリアリティ

『0キス』“おとぎ話”としてのリアリティ

 それからもう一点、現実感を欠いたおかしな場面を挙げておきたい。二人が遊園地を貸し切って(!)、デートをする場面である。これは“スターと普通の女子高生”が、“大人と未成年”の禁断の恋路を歩む二人が、はじめて人目をはばからずデートをするという特別な瞬間。二人の笑顔は輝き、それを祝福するかのように好天である。にもかかわらず、ふいに夜へと時間が変わると、まるで夕立にでもあったかのように地面が濡れているのだ。これは遊園地の(メリーゴーラウンドの)照明の煌めきを画面いっぱいに広げるための、手の込んだ装置演出なのではないだろうか。よくよく見てみるとおかしいのだが、先に述べたような“おとぎ話”としてのリアリティは得ているように思えるのだ。

 本作は「午前0時」に幕切れとなるが、シンデレラの魔法が解けないように、脳内のお花畑が枯れることがないように、そして、お相手の名前を「地獄通信」に書き込むことがないように、祝福し、ただ祈るばかりである。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。Twitter

■公開情報
『午前0時、キスしに来てよ』
全国公開中
原作:みきもと凜『午前0時、キスしに来てよ』(講談社「別冊フレンド」連載)
※原作者・みきもと凛の「凛」は旧字体が正式表記
出演:片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、 橋本環奈、眞栄田郷敦、八木アリサ、岡崎紗絵、鈴木勝大、酒井若菜、遠藤憲一
監督:新城毅彦
脚本:大北はるか  
音楽:林イグネル小百合   
配給:松竹
(c)2019映画『午前0時、キスしに来てよ』製作委員会

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