『ドクター・スリープ』呪われたホテル再現の裏側が明らかに キューブリックへのオマージュも 

『ドクター・スリープ』ホテル再現の裏側

 11月29日に公開となる『ドクター・スリープ』のマイク・フラナガン監督やユアン・ マクレガーが、本作に登場するオーバールックホテルの設計や建築などの撮影秘話を明かした。

 本作は、スタンリー・キューブリック監督作『シャイニング』の続編。スティーヴン・キングが2013年に発表した小説をもとに、Netflixで配信されたキング原作の『ジェラルドのゲーム』でメガホンを取ったマイク・フラナガンが監督・脚本を務めて映画化した。『トレインスポッティング』のユアン・マクレガーが、幼い頃壮絶な過去を体験したダニーを演じる。

 本作では、ホテルの再現にあたり、最初にすべきことは『シャイニング』の世界観を改めて探ることだったという。プロデューサーのトレバー・メイシーは、「キューブリック財団は非常にオープンで寛大に対応してくれて、僕らにオリジナル映画の元映像やセットの設計図を見せてくれた。ホラー映画の新基準を打ち立てた『シャイニング』の世界に立ち戻ることができたのは彼らのおかげだよ」とキューブリック側が理解を示してくれたことに感謝の意を表す。

 制作チームには、監督が『オキュラス/怨霊鏡』以来一緒に仕事をしてきた、家族のようなスタッフが大勢結集した。美術チームは、前作の映像とセットの設計図を徹底的に分析し、フラナガン映画とキューブリック映画の最適なバランスを見出していった。約8000平方メートル以上におよぶセットは、アトランタにあるブラックホール・スタジオの4つの防音スタジオに建てられ、『ドクター・スリープ』全編を通して描かれる内観がスタッフの努力によって構築された。

 セットに合わせ小道具や衣装も忠実に再現。『シャイニング』でダニーの父ジャックが使ったタイプライターと同じものを求め、ドイツまで行って入手したエピソードも。担当したテリー・アンダーソンは、「『シャイニング』の衣装を再現するのはとても興味深く、オタクレベルまで突き詰める必要があった。衣装を作り始めて感じたのは、天才の作品に触れているような感覚だった。鳥肌が立ったわ」と語る。

 さらに、撮影をスケジュールどおりに進めるため、制作陣はマトリョーシカ人形式のアプローチを取った。セットのなかにもうひとつセットを作り、ひとつ目の撮影が終わったら、新しいセットが現れるようにしたのだ。この建設と解体を繰り返す超等身大のパズルを実現するには、プリプロダクションにおける膨大な事前準備、そして主要撮影中にはさまざまな調整作業を要した。『シャイニング』では建設に2年間かかったセットは、モデルがあったとはいえ、『ドクター・スリープ』ではたった6週間で再現。そして撮影の12時間後に解体された幻のセットとなった。

 フラナガン監督は、「入った途端、僕らは子供に戻ってしまった。もちろん、筋金入りのオタクで映画ファンだということが一因だろう。しかし製作のトレバーにも似たようなことが起こった。経験豊富なプロデューサーである彼ですら、コロラド・ラウンジに入ったらまるで子供に戻ったようだった。大変な撮影の一日が終わると、僕らは順番に三輪車に乗ってセットを巡って楽しんでいたんだ」と、幾何学模様の絨毯のダニーさながらに、『シャイニング』体験を楽しんだという。

 ダニーを演じたマクレガーは、「ラウンジは階段の上も含め、まさに端から端まで全体を使ったんだ。撮影するには魔法のような空間だった。僕らの周りに存在するすばらしい世界を作るのは監督のマイクの仕事だ。もちろん物語を綴るのも彼の仕事だが、すばらしい監督ぶりだったよ」と監督をはじめとする制作チームの手腕を絶賛した。

 さらに、『ドクター・スリープ』のセットには秘密も隠されている。室内で壊れた電灯がちらつく場面がいくつかあるが、それはランダムではなく、実はモールス信号で、キューブリックの誕生日、“REDRUM”、“Room 237”などの“メッセージ”が隠されている。

■公開情報
『ドクター・スリープ』
11月29日(金)全国ロードショー
原作:スティーヴン・キング『ドクター・スリープ』(文春文庫刊)
監督・脚本:マイク・フラナガン
出演:ユアン・マクレガー、カイリー・カラン、レベッカ・ファーガソン
配給:ワーナー・ブラザース
(c)2019 Warner Bros. Ent. All Right Reserved
公式サイト:www.doctor-sleep.jp

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