阿部寛演じる桑野の生き方は、人生百年時代のモデル? 『まだ結婚できない男』に学ぶ人生の醍醐味

『まだ結婚できない男』に学ぶ、人生の楽しみ方

 話は変わるが、本作では有希江が営むカフェ「ブラウン・クローバー」(後の「ピュルテ」)でのシーンがよく描かれる。そこは、桑野やまどかたちが集う憩いの場である一方、女優の早紀のために桑野が一緒に台詞合わせをしたのも、エリカと桑野が対面したのも、まどかが母親との間の過去を詳しく話したのも、この「ブラウン・クローバー」であった。このカフェは『まだ結婚できない男』における大切な空間の一つであることは間違いない。桑野やまどか、早紀はもちろん、英治(塚本高史)や桜子(咲妃みゆ)も訪れる「ブラウン・クローバー」は、いつしか桑野たちにとってなくてはならない存在になっている。

 桑野が第1話のスピーチで話していたように、これから人生百年の時代が来ると言われている。そんな時代がやってくるからこそ、私たちが大切にしなくてはならないのはひょっとすると「ブラウン・クローバー」のような場なのかもしれない。結婚するのもしないのも個人の自由である。しかし、桑野のように結婚しない生き方であっても、なかなか一人だけで生きていくことは、そう簡単にできるものではない。時には、誰かとちょっとした会話ができたり、相談ができたり、新たな関係が生まれたりする場に身を置きたくなることだってある。それはカフェでなくてもいい。ただ、「ブラウン・クローバー」のようにいろいろなタイプの人間が集まるコミュニティが自分の近くにあるだけで、人生はよりゆとりのあるものになるはずだ。

 『まだ結婚できない男』で描かれる人々はみなそれぞれが、自分のやり方で人生を謳歌している。相変わらず気ままに生きる桑野、これからも東京で弁護士として頑張り続けるまどか、カフェの権利を手に入れて新たに「ピュルテ」を始める有希江、夢に向かって日々汗を流す早紀。一人一人がそれぞれに不器用なところがありながらも、お互いにアドバイスを送りあったり、助け合ったりする桑野たちの姿に、これからの時代における「人生の謳歌」の仕方を垣間見る思いがする。

(文=國重駿平)

■放送情報
『まだ結婚できない男』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00~21:54
出演:阿部寛、吉田羊、深川麻衣、塚本高史、咲妃みゆ、平祐奈、阿南敦子、奈緒、荒井敦史、小野寺ずる、美音、RED RICE、デビット伊東、不破万作、三浦理恵子、尾美としのり、稲森いずみ、草笛光子
脚本:尾崎将也
演出:三宅喜重(カンテレ)、小松隆志(MMJ)、植田尚(MMJ)
チーフプロデューサー:安藤和久(カンテレ)、東城祐司(MMJ)
プロデューサー:米田孝(カンテレ)、伊藤達哉(MMJ)、木曽貴美子(MMJ)
制作著作:カンテレ、MMJ(メディアミックス・ジャパン)
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/kekkondekinaiotoko/

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