なぜ癒される? 秋ドラマに見る「面倒くさい男」たち

「面倒くさい男」ドラマ、なぜ癒される?

 偶発的にLGBT関連ドラマが多数作られた2019年。前クールには、『監察医 朝顔』(フジテレビ系)、『サインー法医学者 柚木貴志の事件―』(テレビ朝日系、以下『サイン』)という医療×刑事複合技ドラマが重なったり、『ボイス 110緊急指令室』(日本テレビ系)、『TWO WEEKS』(カンテレ・フジテレビ系)、『サイン』などの韓国原作ドラマが集中したり、『凪のお暇』(TBS系)、『セミオトコ』(テレビ朝日系)で国分寺~立川エリアを舞台としたアラサー女性の夏が描かれたりと、テーマや手法が重なってくることは少なくない。

 そんな中、今クールで目立つのは、「面倒くさい男」だ。

 筆頭はもちろん、阿部寛主演の『まだ結婚できない男』(カンテレ・フジテレビ系)。30分×2本という異色の構成に挑んだ生田斗真主演の『俺の話は長い』(日本テレビ系)も、なかなかの面倒くささだ。そして、波瑠主演の『G線上のあなたと私』(TBS系)の中川大志も、若いながらも別の角度から面倒臭さを放っている。

 それにしても、そんな面倒くさい男たちに、ちょっとイラっとしたりクスリとさせられたりした挙句、なんとなく癒されてしまうのは何故だろうか。

 一つには、彼らの裏表のなさが挙げられるだろう。タイプも世代も異なる三者だが、それぞれに周囲を怒らせたり困惑させたり、ドン引きさせたりするほどの正直さを持っている。

 阿部寛演じる桑野信介の場合、偏屈ぶりは前作と変わらず。誰も聞いていないうんちくを一方的に得意げに披露したり、言わなければ良い嫌味を付け加えたりする。でも、それは言いたいことを胸にしまっておけない正直さゆえ。しかも、13年前に比べて年齢を重ねたためか、態度が少々柔軟になっている気もする。

『まだ結婚できない男』(c)関西テレビ

 にもかかわらず、前作よりも女性陣は桑野に対して悪口大会のオンパレードで、キツイ態度であることがちょっと引っかかる。特に桑野の母親の前で悪口を平気で言う女性たちは、鬼のように見え、女性たちのほうにドン引きした人も多かったのではないだろうか。

 続編の評価として、女性陣が前作に比べて劣るという指摘が多く見られる。女性のキャラが弱い、演技力が……などという批判は多数あるが、何より腑に落ちないのは桑野との関係性だろう。前作では、周囲の人が皆なんだかんだ文句を言いつつも、桑野という偏屈な人物をあたたかく包み込んでいた。そのため、視聴者も夏川結衣などの視点から桑野を見て、桑野に呆れつつも愛着を持ってしまっている。にもかかわらず続編では、年齢を重ねて偏屈に哀愁が加わってきた桑野に対して、女性たちが優しくない。その様子を目の当たりにすると、なんとなくモヤモヤした気持ちになってしまう。新しく登場したキャラよりも、なぜか視聴者が「桑野を理解する身内目線」になってしまうのだ。

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