ディーン・フジオカが語る、令和の『シャーロック』への挑戦
「愛ゆえに一線を超えることもあるかもしれない」
――難しい質問かとは思いますが、人が犯罪を犯す心理、一線を超えるポイントとは何だと思いますか。罪を犯す者と犯さない者を、何が分けているのでしょう。
ディーン:うーん、難しいですね。(しばし考えてから)本来であれば愛があるからこそ踏みとどまれると思えますが、時には愛ゆえに一線を超えることもあるかもしれない。なかなか単純な世の中ではありませんし。難しいですね。ただ決して法律とか、そういったものではないと思うんです。一線を超える……。そのテーマでいくらでも映画を作ることもできますよね。たぶん、そこに対する興味というのが、この作品にとっての“シャーロック”のひとつのエンジンなのかもしれません。
――“シャーロック”のエンジンですか。
ディーン:人はなぜ罪を犯すのかということに対して、“シャーロック”自身、自分の中にあるそうした犯罪衝動みたいなものと向き合いながら対峙している。だからこそ謎を解くことに対して異常な執着心があるし、特殊能力ともいえる推理力にも説得力が伴うのだと思います。これだという答えは言えませんが、そこに向き合うことが、今回、“シャーロック”を演じるうえで、ひとつの大きな裏テーマでもあるのかなと思いますね。
――『モンテ・クリスト伯』の西谷監督との再タッグです。西谷監督らしさをどんなところに感じてますか?
ディーン:とにかく割本(台本から、その日に撮影されるする部分を抜粋し、カット割りや監督の意図などを書き込んだもの)が細かいですね。事前の段階で相当な準備をされているのが伝わってきますし、だからこそ現場で何かしらの対応や変化を加える場合にも、周りもついてこられるのだと思います。
――どういったところが細かいのですか?
ディーン:たとえばストーリーの中で主軸にならないようなキャラクターがいますよね。そうした人のバックボーン、設定も考えられているんです。エキストラにも細かい演出をされています。トータルとして、作品のクオリティをちゃんと上げようという意識があって、カメラのフォーカスが当たっているところだけではなく、全体を引き上げることへの執念みたいなものを感じます。だからこそ、みんなが西谷さんのジャッジに対して信頼感を持つのだと思います。
――今回、新しく感じているところはありますか?
ディーン:『モンテ・クリスト伯』のときに比べると、すごく丸くなられた気がします(笑)。こういうやり方もあるんだなと。『モンテ・クリスト伯』は本当に何でも出てくるイベント盛りだくさんの作品だったので、ストイックに、シビアにならざるを得ませんでした。『シャーロック』の場合は、フィジカル的には『モンテ・クリスト伯』より負担が軽い。肉体ではなく、脳みそを使って、そちらの神経をすり減らす感じですね。今回は、監督の仕切り方がすごく優しく、柔らかいです。柔軟に、状況によってリーダーシップの取り方を変えられる凄さを感じています。
この前、西谷さんが「これが令和のシャーロックの姿だと思います」と言ってくださったんです。その言葉が、自分にとってのひとつの自信に繋がっていますし、西谷さんのイメージに少しでもシンクロし始めているんだなと、手ごたえを感じています。
(取材・文・写真=望月ふみ)
■放送情報
『シャーロック』
フジテレビ系にて、10月7日(月)スタート 毎週月曜21:00~21:54
出演:ディーン・フジオカ、岩田剛典、山田真歩、ゆうたろう、佐々木蔵之介ほか
原作:アーサー・コナン・ドイル『シャーロック・ホームズ』シリーズ
脚本:井上由美子
プロデュース:太田大
演出:西谷弘
制作・著作:フジテレビ第一制作室
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/sherlock/