「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『宮本から君へ』

編集部オススメ映画は『宮本から君へ』

 そして、ドラマでは宮本が一目惚れして追いかけるヒロイン・甲田美沙子(華村あすか)の存在に隠れ、登場シーンも少なかった靖子を演じた蒼井が、本作で壮絶な恋愛映画のヒロインを全うする。靖子が、宮本の前で引き出す感情は全力で、蒼井が喜怒哀楽が振り切れた表情を見せる。幸せいっぱいの微笑みから、ある事件がきっかけて失われてしまった笑顔と引き換えに、靖子の悲しみと怒りと呆れの感情が混ざり、慟哭する。

 宮本にとって、第一印象は自立していてしっかり者の女性だった靖子。しかし彼女は、遊び人の元恋人・風間裕二(井浦新)の存在が断ち切れず心に棲みついていたり、ある事件で深く深く傷つく、とても弱い存在だった。そして、それと同時に蒼井の言葉の端々や佇まいから感じたのが、ボロボロになった宮本を前にした時、受けた傷を抱えて、乗り越えていこうという靖子の強さだった。

 山ちゃんとの結婚会見でにこっと微笑んでいた花嫁とは思えない、感情をこれほどまでにむき出しにした蒼井優をみて、これからもより女優として生き続ける覚悟のようなものを勝手に感じた。役者たちの中で、タイプは違くても、芝居に対しての向き合い方にどこか同じ空気を感じる池松と蒼井。鑑賞後には本作のエネルギーを全身に受け、どっと疲れを感じるかもしれないが、「宮本浩」という人物を通じて2人が向き合ったものを、ぜひ確かめてみてほしい。

■公開情報
『宮本から君へ』
全国公開中
原作:新井英樹 『宮本から君へ』百万年書房/太田出版刊
監督:真利子哲也
脚本:真利子哲也、港岳彦
出演:池松壮亮、蒼井優、井浦新、一ノ瀬ワタル、柄本時生、星田英利、古舘寛治、ピエール瀧、佐藤二朗、松山ケンイチ
主題歌:宮本浩次「Do you remember?」(ユニバーサルシグマ)/レコーディングメンバー Vocal:宮本浩次、Guitar:横山健、Bass:Jun
Gray、Drums:Jah-Rah
配給:スターサンズ、KADOKAWA
(c)2019「宮本から君へ」製作委員会

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