『凪のお暇』愛は毒にも薬にもなりうる ゴン(中村倫也)がメンヘラ製造機たる所以が明らかに

『凪のお暇』愛は毒にも薬にもなりうる ゴン(中村倫也)がメンヘラ製造機たる所以が明らかに

 空気を読み合う凪と慎二は、似た者同士だった。「付き合っちゃう?」の言葉には、「あなたが好き」が入っているのだと通じる仲。感覚が似ていればこそ、言葉足らずを補い合える。だが、ゴンの「好き」は、凪や慎二のそれとは異なる。異なることはわかるけれど、何がどこまで違うのかがわからない。その差異を知るには、話し合うしかない。しかし、それができないから、視野はどんどん狭くなり、気づけば闇に堕ちていくのだ。

 最初は、心の傷を癒やしてくれる鎮痛剤だった恋。だが、その快感に依存すれば、あっという間に感覚が麻痺していく。もっと、もっと……とハマっていく。せっかく仲良くなった小学生のうらら(白鳥玉季)からも「おかしくなった」と言われ、龍子(市川実日子)のまっすぐな意見にも耳を塞いでしまう。見たくない、聞きたくない、誰にも非難されたくない……と、殻に閉じこもっていく凪。

 ゴンが「メンヘラ製造機」と呼ばれる所以は、そこにある。一見、同時に複数のパートナーを愛せるポリアモリーにも思えるが、ゴンの場合は関係を持った相手に対して「パートナー」という感覚が薄い。一方で、合鍵を渡された女性たちは、自分はパートナーになったのだと思うから、すれ違いが起こる。それがモノガミー(1人だけと関係を持つ考え方)なら、なおのことだ。

 ゴンとの恋愛が、楽しくて、心地いいものにし続けたいのなら、そのゴンの特徴を知り、受け入れなければならない。嫉妬という副作用に支配されて、自分が自分でいられなくなるのは、本末転倒だ。そして、ゴン自身も自分の愛し方には「相互理解」がないと成り立たないことに気づかない限り、目の前で好きな人がどんどん壊れていくのを繰り返すだけになってしまう。

 ゴンを想うあまり、壊れかけている凪を見て号泣する慎二。「もしかして泣いてるの?」と驚く凪だが、視聴者は毎回慎二が泣いているのを知っている。自分が傷ついたときには人知れず泣く男が、凪が傷ついていると知ってその場で泣いたのは、空気を読むよりも凪への思いが大事だと気づける予兆だろうか。だが、人は簡単には変われない。慎二が凪にかけた呪いの言葉は、そのまま慎二自身にも降りかかる。

 そして、予告編では、誰に対しても同じように「好き」と思っていたゴンの中で、凪への「好き」が特別なものに感じられるようなシーンも。果たして、ゴンも相手を壊さずに愛する方法を見つけることができるのか。自分の恋が自分を幸せにする薬であるために、自分の愛がパートナーを癒やし続ける薬であるために。凪、慎二、ゴンそれぞれの毒に、もう少しだけ向き合ってみたい。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
金曜ドラマ『凪のお暇』
TBS系にて、7月19日(金)スタート 毎週金曜22:00~22:54放送
出演:黒木華、高橋一生、中村倫也、市川実日子、吉田羊、片平なぎさ、三田佳子、瀧内公美、大塚千弘、藤本泉、水谷果穂、唐田えりか、白鳥玉季、中田クルミ、谷恭輔、田本清嵐、ファーストサマーウイカ
原作:コナリミサト『凪のお暇』(秋田書店『Eleganceイブ』連載)
脚本:大島里美
演出:坪井敏雄、山本剛義、土井裕泰
プロデューサー:中井芳彦
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/NAGI_NO_OITOMA/

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