仲野太賀、“演技派”で“個性派”という2つの顔はどう獲得したのか 改名までのキャリアを振り返る

仲野太賀の改名までのキャリアを振り返る

 芸能人の改名というのはこれまでにも数多く例があることだが、かつてはあまりポジティブなイメージが伴わなかった。しかしながら最近では、2017年に事務所の移籍をきっかけに“真剣佑”から改名した新田真剣佑であったり、昨年“健太郎”が本名の伊藤健太郎へと改めたりと、心機一転さらなる飛躍の意味を込めたポジティブな改名が相次いでいる。もっとも、今回“太賀”が“仲野太賀”と名前を改めた例といい、ファーストネームだけの芸名から苗字を付け加えるというケースがある種のトレンドのようなものになりつつあるのかもと思ってしまうほどだ。

『タロウのバカ』(c)2019 映画「タロウのバカ」製作委員会

 太賀の本名は“中野太賀”で、父は哀川翔や柳葉敏郎らを輩出した「劇男一世風靡」のメンバーだった俳優の中野英雄。いわゆる“二世俳優”ではありながらも、とりたててそれをアピールするわけでも、逆にひた隠しにするわけでもなく地道に一人の俳優としての出世街道を歩んできた印象を受ける。2006年にドラマデビューを果たし、翌年にスクリーンデビューを飾ると、さらにその翌年には『那須少年記』で映画初主演を務める。そんな彼の最初の転機となった作品は、おそらく2012年に公開された『桐島、部活やめるってよ』ではないだろうか。

 吉田大八監督がメガホンをとった同作は、当時既に若手実力派俳優として君臨していた神木隆之介や橋本愛に加え、東出昌大、山本美月、松岡茉優、鈴木伸之らのちに大ブレイクを果たす若手俳優たちが一挙に出演。彼らのブレイクを後押ししたのは、もちろんその年の日本アカデミー賞で最優秀作品賞を受賞するほど作品自体の評価が高く、長期にわたって作品への注目度が落ちなかったこともあるが、それ以上にワークショップの形式で行われたオーディションで大勢の中から厳選されたキャストたちだったからに他ならない。それぞれが持つ素質を最高レベルに発揮する環境が作り出され、名実ともに若手俳優を発掘する作品となったのだ。

 その中で、“桐島”が部活をやめたことで複雑な想いを抱くバレー部員を演じていた太賀。劇中でずば抜けて大きい役どころではないものの、原作では語りべも務める重要キャラクターの一人というだけあって、作品の軸となる部分に大きな作用をもたらしたことは言うまでもない。それをきっかけに出演作が増加していった太賀は、その後国際的評価の高い深田晃司監督と『ほとりの朔子』を皮切りに『淵に立つ』『海を駆ける』と連続してタッグを組み、演技派俳優としての一面を獲得していく。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる