仲野太賀、“演技派”で“個性派”という2つの顔はどう獲得したのか 改名までのキャリアを振り返る
そして2016年に放送された日本テレビ系ドラマ『ゆとりですがなにか』で“ゆとり世代”のモンスター社員・山岸役を演じてコメディ演技への適応力の高さを証明したことも、彼の大きな転機といえるだろう。昨年には福田雄一監督の手がけた映画『50回目のファーストキス』で佐藤二朗とともに絶妙なアドリブ合戦を繰り広げ、同じく福田監督のテレビドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)で矢本悠馬とのコンビネーションで見事にそのコメディアンぶりを発揮していき、一気にその知名度を上げることにも成功。まぎれもなく“人気俳優”の一人としての地位を獲得したわけだ。
彼の演技のおそるべきところは、その振り幅の広さにある。国際共同制作プロジェクトのオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』や、吉田羊と親子を演じた『母さんがどんなに僕を嫌いでも』でシリアスな演技を見せたと思いきや、『きばいやんせ!私』で見せた正反対な表情。そして『町田くんの世界』では個性的なキャラクターたちの中でもひときわ笑いを誘う優秀なコメディレリーフとして、26歳ながら空まわりしがちな高校生役を熱演。しかも、どんな役を演じても“悪さ”がなく全面から人柄の良さが滲み出ている点があまりにも魅力的に映る。
今回の改名によってまた新たな転換期を迎えたわけだが、あえて本名の“中野”ではなく“仲野”という表記にした理由にも、彼の人柄の良さを感じることができよう。俳優として財産となってきた“仲間”との出会いを糧にする。今後もYOSHIと菅田将暉共演の『タロウのバカ』が9月に、来年には乃木坂46を卒業したばかりの衛藤美彩とダブル主演を務める『静かな雨』が公開待機しており、さらに8月からは6年ぶり5作品目となるNHKの大河ドラマ『いだてん ~東京オリムピック噺(ばなし)~』への出演も決まっている。“演技派”で“個性派”という俳優としてふたつの顔を獲得した“太賀”から、“仲野太賀”へと進化することで、さらに磨きがかかるのか、それとも新たな一面を獲得するのか。今後も彼の演技から目が離せなくなりそうだ。
■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter
■公開情報
『町田くんの世界』
全国公開中
出演:細田佳央太、関水渚、岩田剛典、高畑充希、前田敦子、仲野太賀、池松壮亮、戸田恵梨香、佐藤浩市、北村有起哉、松嶋菜々子
監督・脚本:石井裕也
脚本:片岡翔
原作:安藤ゆき『町田くんの世界』(集英社マーガレットコミックス刊)
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)安藤ゆき/集英社 (c)2019 映画「町田くんの世界」製作委員会
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/machidakun-movie/
■公開情報
『タロウのバカ』
9月6日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー
監督・脚本・編集:大森立嗣
出演:YOSHI、菅田将暉、仲野太賀、奥野瑛太、植田紗々、豊田エリー、國村隼
製作幹事:ハピネット、ハーベストフィルム
配給:東京テアトル
(c)2019 映画「タロウのバカ」製作委員会
公式サイト:www.taro-baka.jp