山下智久×紐倉哲が生み出した“魅力的な笑顔の表現” 『インハンド』で周りを輝かせる「主役」に

 山下智久主演のドラマ『インハンド』(TBS系)が、6月21日放送分で最終回を迎える。漫画誌「イブニング」で連載中の朱戸アオ氏による同名漫画が原作。山下が演じているのは、右手にロボットハンドの義手を持つ、人嫌いでドSで、寄生虫を研究する天才科学者・紐倉哲だ。

 放送開始当初は、感情を表面に出さず、無表情で低いトーンでボソボソ喋る山下を、これまで演じてきた数々の役柄と重ね合わせて観てしまっていた。

 ただ立っているだけでも絵になる姿と、クレバーな印象の強い本人像から、大ヒットドラマ『コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-』シリーズ(フジテレビ系)をはじめ、周りから浮き立つような天才役を演じることも多かった山下。本作もまた、そうした天才の系譜かと思ったのだが、これが大きく異なっていた。

 『インハンド』の大きな魅力は、濱田岳演じるお人好しの助手・高家春馬と、菜々緒演じる、正義感が強くてクールで頭脳明晰なエリート官僚・牧野巴とのチームワーク。山下と濱田の掛け合いの面白さ、可愛さと、それを母のように見守る菜々緒の構図、関係性の積み重ねは、回を重ねるごとに魅力的に変わっていった。

 最初は無感情に見えた紐倉が、高家に対してやりたい放題でドSに振る舞えば振る舞うほど、ときには甘えに見えるほどの信頼感が漂ってくる。

 高家に対して、眉をクイッと持ち上げ、自分勝手で奇妙な要求を突きつける紐倉の嬉しそうなこと。もともと歯を見せてニッコリ笑うことが、芝居でも、それ以外のときにもあまり多くない山下だが、笑顔を見せていないのにもかかわらず、やりとりを楽しんでいる様子、ウキウキしている様子、嬉しそうな様子が、眉や頬をピクッとさせる微妙な動きから伝わってくる。

 白い歯を見せて笑うより、嘘がないし、むしろ抑えた中に嬉しい感情があふれ出してしまったように見えて、愛らしくなる。こんな魅力的な笑顔の表現があったのかと思うほど、紐倉という役との出会いはしっくりきて、山下の役者としての幅を広げている。

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