ユースケ・サンタマリア、滝藤賢一、西島秀俊、藤木直人……40代俳優たちの“甘さとほろ苦さ”

40代俳優たちを“珈琲”に例えると?

 今期のドラマを振り返ると、大人の男の魅力を放つ40代俳優の活躍がとにかく目立った。飲み物で例えるならば、勢いで注目されるタピオカミルクティーでも、期間限定の甘さで勝負のフラペチーノでもなく、通が好み日常の癒しにも刺激にもなる、香り高い自分好みの珈琲のおいしさを再発見した感覚。ときには甘く、ときにはほろ苦く、作品によって変幻自在。30代でもなく、50代でもない、40代という年齢だからこそ生まれる彼らの魅力について検証したい。

『東京独身男子』滝藤賢一

『東京独身男子』(c)テレビ朝日

 6月8日に最終回を迎えたドラマ『東京独身男子』(テレビ朝日系)で高橋一生、斎藤工とともにAK男子(あえて結婚しない男子)の弁護士・岩倉和彦を演じた滝藤賢一も不惑を超えた42歳。シリアスからコメディまで自在に演じ分ける実力がある滝藤だが、本作では大人の男の色気を感じさせる場面がとくに印象に残った。

 2018年に連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK総合)でヒロイン鈴愛(永野芽郁)の明るく情にもろい父親役を好演し、同じく2018年4月期に『花のち晴れ~花男Next Season~』(TBS系)で真逆の冷酷な父親を演じるなど、さまざまなお父さんを演じ分けてきたが、本作ではあふれる父性を封印。AK男子3人の中では一番年上で遊びも仕事も順調そのもの、兄貴的存在のハイスペックでモテる独身男を嫌味なく演じていた。

 部下の日比野透子(桜井ユキ)との結婚に関しては、自分の父親の介護の問題があって簡単には進めないでいたが、最終的には彼女の立場を尊重し、深い愛を感じさせる提案をした。その決断により、父親も安心させるというアラフォー男子の鑑となるような男気を見せつけた。その結果、彼女のほうからのプロポーズを受けることになるのだが、この余裕と自信。30代では重みや説得力に物足りなさが残ったかもしれない。

 『あさイチ』(NHK総合)のプレミアムトークに出演した際、無名塾で10年間の下積み生活をしていた話に触れ、「仲代(達矢)さんに『自分を磨きなさい。君は40歳からが勝負だ』と言われていたので、それを信じて」と語っていた。その言葉通り、2008年公開の映画『クライマーズ・ハイ』で注目を浴びたのが31歳のとき。それ以降、確実に知名度を上げ、さまざまなドラマで存在感を発揮してきた。40歳を過ぎてからさらに色気や甘さも漂わせ、より男としての魅力も増しているようだ。

大人の苦み☆☆ 大人の甘さ☆☆ 色気(香り)☆☆

『きのう何食べた?』西島秀俊

『きのう何食べた?』(c)「きのう何食べた?」製作委員会

 そして、大人の男の色気といえばこの人、西島秀俊(48歳)を忘れるわけにはいかない。内野聖陽(50歳)とW主演を務める『きのう何食べた?』(テレビ東京系)は最高のキャスティングが絶賛され、原作ファンも納得の筧史朗(シロさん)を演じている。

 西島秀俊演じるシロさんは弁護士といっても、先に紹介した『東京独身男子』の岩倉(滝藤賢一)のように大手弁護士事務所を経営するボス弁ではなく、プライベート重視の、雇われ弁護士。仕事帰りにスーパーで値引き品を賢く購入、冷蔵庫にある残り物と合わせてベストな献立を整えるのが日課の、これまたアラフォー主夫(主婦)の鑑のような存在だ。

 こんなにもエプロンの似合う俳優がかつていたであろうか。2019年1月期のドラマ『メゾン・ド・ポリス』(TBS系)では、訳あってシェアハウス「メゾン・ド・ポリス」に雑用係として暮らす元警視庁捜査一課の敏腕刑事だった夏目惣一郎を演じた西島秀俊。CMなどで見せる温かみのある表情でのエプロン姿とはまた別の顔、訳ありの匂いがドラマを盛り上げた。

 40代の魅力の一つとして、経験を積んだ大人としての安定感が挙げられるが、「いいお父さん」「いい夫」としての安心感だけでは色気は生まれてこない。ガツガツと前のめりではない落ち着きや、自信といったものがあって、程よい大人の男の色気というものが多くの人の心をとらえるのではないだろうか。

 人懐こくて情に厚い美容師のケンジ(内野聖陽)とのやりとりも自然で、繊細なその演技は癒しさえ与えてくれる。年齢を重ねるほどに魅力を増す俳優であることを、今期のこのドラマでも証明してくれた。

大人の苦み☆☆☆ 大人の甘さ☆☆ 色気(香り)☆☆☆

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