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蒼井優と竹内結子の姉妹が“自分の人生”を取り戻す 『長いお別れ』が描く家族と個のつながり

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 直木賞受賞作家・中島京子原作に、『湯を沸かすほどの熱い愛』で日本アカデミー賞で優秀作品賞ほか6部門を受賞した中野量太監督が監督・脚本を手がけた『長いお別れ』。

 認知症を患った父・東昇平(山﨑 努)と、それに向き合い受け入れ進んでいく家族の姿を追った7年間にわたる物語だ。ただこれが「闘病記」には終わらず、家族が再結集し、それぞれが抱える問題を見つめ直し自分を再確認しながら取り戻していく話とも言えるだろう。

 この作品のテーマの1つに「繋がり」が挙げられるように思う。

 まず長女の麻里(竹内結子)は夫の海外赴任先に同行したいわゆる「駐在妻」。家族から「悠々海外でいいよね」なんて言われながらも、実際は言語の壁もあって慣れない生活、そこでの孤独に耐えながら必死に適応しようと奮闘している。

 しかしそんな麻里の苦労を知ってか知らずか、冷静沈着な夫は彼女とろくに話し合う時間を持とうとせず、「家族と言えどもそれぞれが自己責任のもと人生を進めていくもの」だという持論を展開する。麻里とはかけ離れた家族観の持ち主のようである。

 おそらく見ず知らずの土地で、麻里が所属しているコミュニティは「家族」のみで、人との「繋がり」を感じられるのも家族のみという閉じた環境。だが、実家から召集がかかった際に「家に帰るね」と思わず口走った麻里に対して、旦那から「君の帰る家はここじゃないのか」と問われるシーンも。

 この環境下で仕方のない部分もあるのだろうが、麻里自身が「あるべき夫婦像」や「理想の家族像」に縛られすぎているようにも見受けられる。またそれを夫婦で共有はできておらず、「本気で向き合いたい」と願っているはずの麻里自身が実は家族に対して本音を全くぶつけられていないのだ。

 自分に無関心かに見える夫、学校もサボりがちな息子に対して、父親にテレビ電話で泣きながら相談する場面がある。「私、ほんとはお父さんとお母さんみたいな夫婦になりたかった」。これまで家庭内の問題を見て見ぬ振りしたり、自分だけで解決するのだと気負ってきた麻里がようやく本音をこぼした瞬間だった。

 一方、妹の芙美(蒼井優)は、最初父親の認知症に対して最も拒絶反応を示していた。自分で立ち上げたワゴン販売のカレー屋の運営も恋愛も上手くいかない33歳。中学校の校長先生まで務め上げた父親が望むような職業や生き方を選択してこなかった自分に対して負い目を感じているようでもある。これまで自分の思うように生きていて、どれも中途半端に終わってしまっており、何も成し遂げられていない中で弱っていく父親を見るのは辛かったのだろう。自分の時間軸だけで生きていた過去に対して少し責任を感じているのかもしれない。

 父親に自分の仕事について打ち明けることになった際にも「期待外れだよね、私。お父さんは教師になって欲しかったんだもんね」と申し訳なさそうに切り出す。そこで、父親が「立派だ」と言い切ってくれたことが彼女にとって何よりの再起のきっかけになったのは明らかだ。その瞬間、おそらく彼女の中で初めて芽生えた感情が「諦めたくない」だった。

 これまで「自分の人生」としか考えてこなかった芙美の時間が、「お父さんの残された時間」と接続された時に、彼女の中でこれまでにはなかった「覚悟」が生まれたのではないだろうか。

      

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