中丸雄一のフラットさに隠れる真相とは? 『わたし、定時で帰ります。』ハッキリと見えた巧の本音

 見ている人の心に小さなシミを残す中丸の演技。そのシミがいつか何かの伏線になるのではとどんどん広がっていくこともあれば、大したことなかったのだと薄くなっていくこともある。ドラマを通じて、心に残したシミがもたらすゆらぎを楽しみたい人にとっては、最高の役者とも言えるのではないか。

 また、『わたし、定時で帰ります。』は、現代の「普通」を描こうという意欲作でもある。善と悪のわかりやすい対立ではなく、それぞれの言い分に「普通」である私たちの誰もが共感でき、日常的な葛藤や、陥りがちな空回りっぷりを丁寧に紡いでいく。

 だからこそ、中丸が醸し出す「普通」の人っぽさは、必要不可欠な存在ともいえる。むしろ、現段階では「普通」よりも出来すぎている分、何か一波乱あるのではと、深読みしたくなるのかもしれない。

 そんな今まで飄々とした巧が、第6話のラストでは晃太郎に対して煽るような態度を取った。冷静な物言いの中にハッキリと見えた、巧の本音。ここから巧がどのような変化を見せるのか、それとも私たちの思い過ごしに終わるのか。胸をざわつかせる中丸の演技も、ストーリーのクライマックスに向けて楽しみにしている。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』(c)TBS
TBS系にて、毎週火曜22:00~放送
原作:朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』シリーズ(新潮社刊)
出演:吉高由里子、向井理、中丸雄一、柄本時生、泉澤祐希、シシド・カフカ、内田有紀、ユースケ・サンタマリアほか
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
演出:金子文紀、竹村謙太郎
プロデューサー:新井順子、八尾香澄
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/watatei/

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