『チア男子!!』は意外にもビジネスマン向け? 横浜流星の“笑顔の変化”から学ぶ、チームの築き方

『チア男子!!』は意外にもビジネスマン向け?

 スポーツでも仕事でもなんでもそうだが、人それぞれにモチベーションは様々で、それでも目指すべき1つの大きな目標に向かって協業して取り組んでいる。さらに本当に辛い局面は誰だって1人で対峙するしかなくて、「自分の課題」として自力でクリアしていくしかないのだ。だが、その苦しい時に、物理的にはたとえ1人であっても、そこでどれだけ「自分は1人じゃない。あいつらがいる。あいつらも頑張っている」と思えるか、そんな風に思い合える相手がいるかどうかが大切になってくるのではないだろうか。それこそが「信頼関係」と呼べるものであり、そんな信頼関係をどれだけ他人と結べるか。これがチームの醍醐味で、人生の充実度にも大きく関わってくる要素だと言っても過言ではないだろう。

 本作は単なる「青春物語」としての側面のみならず、組織論やチームビルディングについてもヒントとなり得る人間模様が映し出された、大人、中でもビジネスマンが観ても学びの多い内容となっている。

 自分ひとりだけのことだったらとうに諦めてしまっていたようなことも「皆がいるから頑張れる」、「誰かを応援したい」、「トップを跳ばせたい」など相手のことを思って取り組むと、自分でも信じられないような底力が湧いてくる。自分だけなら決して進めなかった一歩が踏み出せるというような、チームだからこその相互作用、強さについても描かれている。

 大切なメンバーのことほど放っておけない。近くで見ているメンバーの頑張りを何も知らない人から笑われたりバカにされるのは自分が侮辱される以上に許せない。そんな身近な他者からの思いが呼応し合って本人の中でも前向きな変化が起こり、連鎖していく。青春モノ・スポ根作品の見どころが、本作にはギュッとリアルな温度感で凝縮されている。

 本作を通じて横浜流星が、少し内気で引っ込み思案な主人公晴希に起こる心の変化を、ドラマ『はじこい』こと『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)のゆりゆりとはまた異なるアプローチで熱演している。猛特訓の末撮影に臨んだというチアの演技はもちろんのこと、最初は自信のなさや自分の本音をごまかすために取り繕っていたような「笑顔」が、どんどん達成感の最中にあるキラキラと眩しい正真正銘の大きな「笑顔」に変化していく様も是非劇場で見届けてほしい。


■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで2018年の劇場鑑賞映画本数は96本。Twitter:https://twitter.com/Tominokoji

■公開情報
『チア男子!!』
全国公開中
出演:横浜流星、中尾暢樹、瀬戸利樹、岩谷翔吾、菅原健、小平大智、浅香航大、清水くるみ、唐田えりか、山本千尋、伊藤歩
原作:朝井リョウ『チア男子!!』(集英社文庫刊)
監督:風間太樹
脚本:登米裕一
主題歌:「君の唄(キミノウタ)」阿部真央(PONY CANYON)
制作プロダクション:AOI Pro.
配給:バンダイナムコアーツ/ポニーキャニオン
(c)朝井リョウ/集英社・LET’S GO BREAKERS PROJECT
公式サイト:https://letsgobreakers7.com/

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