二大看板「朝ドラ」と「大河」以外でも高いクオリティ保持 意欲作が続く近年のNHKドラマを探る

NHKドラマ、意欲作が続く理由

 若者向けドラマ枠として今もっとも注目なのは、よるドラ(土曜23時30分放送)だろう。2018年から始まったこの枠は、昨年はBSプレミアムで放送された『植物男子ベランダー』を再放送していたが、今年に入ってオリジナルドラマに着手。今クール放送された『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』は、タイトルのとおり、何とゾンビモノ! 

 ある地方都市でゾンビが発生する中、そこで暮らすタウン誌のライター・小池みずほ(石橋菜津美)を中心とした家族や友人の人間関係が描かれたのだが、ホラーというよりは、地方で暮らす人々の鬱屈がゾンビ発生と共に露わになるという展開で、終始どんよりとした空気が流れていた。

 脚本を担当したのが劇団MCRの櫻井智也。閉鎖空間で登場人物が気の利いた会話を延々としている姿は舞台作品のテイストが強く出ており、「テレビ東京の深夜ドラマでやっているようなことを、あえてNHKでやってみました」という印象だった。

 閉塞感のある鬱屈した物語や、まとめサイト的なタイトルから漏れ出るSNS受けを狙ったスタイルにはハマれなかったが、それでも新しい才能を起用して若者向けドラマを作ろうという志は高く評価する。

 次回作は『腐女子、うっかりゲイに告る。』。タイトルだけみると、SNS受けを狙っている今どきの作品に見えるが、脚本が『デートまで』や『それでも告白するみどりちゃん』等のWEBドラマで注目される劇団「ロロ」の三浦直之であるため、一筋縄ではいかないドラマになるだろうと期待している。

 作家性の強い脚本家と、クオリティの高い映像を作るNHKのディレクターとのコラボによって名作を作ってきたのがNHKドラマだ。よるドラには新しい才能を発掘する実験場となってほしい。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
よるドラ『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』
NHK総合にて2019年4月20日(土)から放送スタート
夜11時30分から11時59分 (29分・連続8回予定)
原作:浅原ナオト「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」
脚本:三浦直之
出演:金子大地、藤野涼子、小越勇輝、安藤玉恵、谷原章介ほか 
演出:盆子原誠、大嶋慧介、上田明子、野田雄介
プロデューサー:尾崎裕和
制作統括:篠原圭、清水拓哉
写真提供=NHK

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