『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』が描く“剥き出しの世界” 前作以上に荒ぶる男たちの凄み
イタリアの鬼才ソッリマ監督が描く「剥き出しの魂」
そして最後にこの男に触れぬわけにはいくまい。ドゥニ・ヴィルヌーヴの後を継ぎ、しかしその重責に微塵も臆することなく新たな究極の山を築き上げた鬼才ステファノ・ソッリマ監督。彼の凄さについては『バスターズ』(12)や『暗黒街』(15)に加え、裏社会の闇を描いたTVドラマ版『ゴモラ』などでも折り紙付きだ。イタリアから招聘されたこの逸材について、デル・トロも「まさにヨーロッパ的なテイストをもたらした」と激賞する。
おそらくプロデューサー陣は彼の中に、ヴィルヌーヴとはまた違った持ち味の、強靭な作家性を見出したのだろう。闇社会を貫くアクションとバイオレンスの絵力もさることながら、この砂漠が世界の終わりまで延々と続いているのではないかと思えるほどの圧倒的なスケール感と、登場人物一人一人の「剥き出しの魂」をあぶり出す破格の演出力にも度肝を抜かれる。おそらく本作が幕を閉じる頃には、誰しもがこの豪腕にすっかり心酔し、本作がもはや続編の域を超えた「一本立ちした作品」でもあるのだと深く納得してもらえるのではないか。
繰り返しの鑑賞に耐え得る、究極の一作
とにかく隅から隅まで一瞬一瞬に荒々しい凄みを湛えた本作。劇場公開時にも大きな話題となったことは記憶に新しいが、4月2日にはついにDVD&Blu-rayの発売を迎える。
本作に触れると、リアリティに満ちたこれらの人間絵巻がどのような創意によって形作られたのか、その裏側がたまらなく知りたくなるはず。その点、特典映像にはメイキングやインタビューを交えた裏話が満載で、鑑賞中にはただひたすら翻弄され続けていた(筆者もその口だが)人にもわかりやすく、本作の狙いやこだわりを噛み砕いて教えてくれる。もちろん本作を機にこれまで以上に注目される逸材となったソッリマ監督も、眼光鋭い表情にて本作への思いを沸々と語っているので、見逃さないでほしい。
また、封入特典としてキャストやスタッフのプロフィールや、製作過程を盛り込んだ充実のブックレット、さらに初回特典として本国版のアート・ビジュアルを両面にあしらった特製アウタースリーブも付いている。見るたびに発見のある本作を、ぜひご自宅でじっくりと味わってみてはいかがだろうか。
■牛津厚信
映画ライター。明治大学政治経済学部を卒業後、某映画放送専門局の勤務を経てフリーランスに転身。現在、「映画.com」、「EYESCREAM」、「パーフェクトムービーガイド」など、さまざまな媒体で映画レビュー執筆やインタビュー記事を手掛ける。また、劇場用パンフレットへの寄稿も行っている。
■リリース情報
『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』
4月2日(水)Blu-ray&DVD発売
Blu-ray:5,000円+税
DVD:4,000円+税
【初回生産限定特典】
特製アウタースリーブ
【封入特典】
ブックレット
【映像特典】
・その後の物語:続編の制作
・メイキング:彼らの戦争
・キャストと登場人物:暗殺者と兵士
・予告集
監督:ステファノ・ソッリマ
脚本:テイラー・シェリダン
出演:ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、イザベラ・モナー、ジェフリー・ドノヴァン、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、キャサリン・キーナー
配給:KADOKAWA
原題:Sicario: Day of the Soldado/2018年/アメリカ映画/122分/字幕翻訳:松浦美奈/PG12
発売元・販売元:株式会社ハピネット
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公式サイト:border-line.jp/