『二つの祖国』小栗旬が表現する“日系人としての葛藤” ムロツヨシとは対照的な存在に

『二つの祖国』小栗旬の“日系人としての葛藤”

 3月23日、山崎豊子の同名小説が原作のスペシャルドラマ、『二つの祖国』がテレビ東京系で放送された。

 日系二世である天羽賢治(小栗旬)は、日本で教育を受けたのち、UCLAを卒業し、日系人向けの新聞の記者として働くが、日本人とアメリカ人という双方のアイデンティティを持ちながら、彼ら彼女らに対する差別や迫害に葛藤し翻弄される。太平洋戦争が開始すると、日系人たちは厳しい立場に追い込まれ、1941年12月8日の真珠湾攻撃(パールハーバー)が発生すると、本格的に迫害の対象となり、天羽家も例外ではなく、一家は収容所に送られる。食堂からスプーンが一本なくなったことを理由に、裸にされ尋問されるシーンが痛々しい。

 そして戦争が進むにつれ、日系人たちは「どちらの国に忠誠を誓うのか」という厳しい選択を迫られる。賢治は祖国日本に敵対することになると悩みながらも、米陸軍情報部の日本語教師として赴任することで、収容所を脱出し家族を守ろうとする。一方で賢治の友人であり、チャーリー田宮(ムロツヨシ)は、初めから日本人としての立場を捨て、あくまでアメリカ人として軍の出世階段を登ろうと試みる。チャーリーは賢治が密かに想いを寄せていた井本梛子(多部未華子)と交際・結婚するが、日本人としての生き方を捨てられない彼女とは、やがて別れを迎える。また梛子の友人であり、賢治の妻となった天羽エミー(仲里依紗)もまた、白人からのレイプ被害に苦しむ。

 賢治の弟の忠(高良健吾)は、ロースクールを中退し、母国日本へと向かい、日本兵として徴兵される。もう一人の弟の勇(新田真剣佑)は、日系人が迫害されるのは「アメリカ国民としての義務を果たしていないからだ」と考え、「アメリカ兵士」として生きることで、迫害を回避しようと試みる。しかし勇はヨーロッパ戦線で戦死してしまう。戦死の報を聞いた時の、父・乙七(松重豊)の「子どもを死なせるためにアメリカに来たのではない」というセリフが、胸に刺さる。

 そしてついに賢治は、日本語教師として赴任していたアメリカ本土ワシントンを離れ、前線に赴く決心をする。教え子の兵士たちが前線で命を落とすなかで、安全地帯にいる自分に我慢できなくなったと語る。しかしクライマックスでは、フィリピンの戦線で再会した賢治と忠は敵として合間見えるが、賢治は忠の脚を誤って撃ってしまう。日系人の兄弟にしか起こり得ない悲劇が訪れてしまうのだ。

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