佐々木蔵之介、ムロツヨシ、山内圭哉、荒川良々……軽妙さとユーモアでドラマ支える小劇場系俳優

ドラマで活躍する小劇場系俳優

 ドラマの味を決めるのは、いいバイプレイヤーがいるか否か。主演俳優・主演女優といった一級品の素材の味を、監督や脚本家などの料理人が上手に引き出し、バイプレイヤーという名の至妙なスパイスがぐっと引き締める。そうやって、名作ドラマという極上のひと皿が生まれてきた。

 『バイプレイヤーズ』(テレビ東京系)の追い風を受け、今、そんな個性豊かなバイプレイヤーたちに視聴者の注目が集まっている。中でも異彩を放つのが、小劇場系俳優の活躍だ。今期で言えば、

・劇団innerchild主宰の小手伸也(フジテレビ系『SUITS/スーツ』/蟹江 貢 役)

・笑殺軍団リリパットアーミー出身の山内圭哉(日本テレビ系『獣になれない私たち』/九十九剣児 役)

・大人計画所属の荒川良々(テレビ朝日系『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』/馬場雄一 役)

・コントユニット親族代表所属の野間口徹(日本テレビ系『ドロ刑 -警視庁捜査三課-』/細面隆一 役)

などが代表格。名前を挙げただけでも、字面から個性がはみ出してきそうなクセモノたちが勢揃いしている。

『獣になれない私たち』の山内圭哉(c)日本テレビ

 なぜこうした小劇場系俳優が連ドラの世界で重宝されるのか。ひとつは「クセ」の強さだろう。いわゆる小市民的な役どころや、落伍者的な役どころを、美男美女が演じても今ひとつ説得力に欠ける。見た目にインパクトがあり、キレのいい演技力を持つ小劇場俳優が、時に大胆に、時に繊細に、非王道的な役どころを演じ上げることで、強烈なインパクトが生まれるのだ。こうした「クセ」のある役どころがドラマを盛り上げてくれるのは、『古畑任三郎』(フジテレビ系)の西村雅彦や八嶋智人、『ショムニ』(フジテレビ系)の高橋克実や伊藤俊人など、数々の名作ドラマが証明している。

 また、「軽妙さ」も小劇場系俳優の魅力のひとつ。演劇になじみのない方からすると、舞台と言えば、いかめしい顔をしてシェイクスピアを朗々と読み上げるイメージがあるかもしれない。が、いわゆる小劇場演劇と呼ばれる演劇はそうした古典演劇とはまた別物だ。たとえば荒川良々の所属する大人計画は、主宰の松尾スズキが放つ、ファンキーでブラックな笑いが特徴。現実から飛躍した過激な作風で、観客を非日常の世界へと連れ出してくれる。

『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』荒川良々(c)テレビ朝日

 映画館ほど観劇環境がよろしくはない小劇場で、2時間なり3時間のあいだ、観客を引き込むには、ある程度ユーモアやコメディセンスが不可欠。特にナマモノの舞台では、客席の反応を見ながら柔軟に芝居を変えたりネタを入れたりする軽妙さと空気を読む力がないと、なかなか観客を味方にはできない。いわゆる小劇場系俳優が画面に出てきた瞬間に、何か面白いことをしてくれそうという期待感をにじませるのも、数多の舞台で培った百戦錬磨のサービス精神ゆえだろう。先日放送された『田中圭24時間テレビ』(AbemaTV)で、劇団扉座所属の六角精児が撮影でいきなり「面白いこと言って」とムチャブリされた過去をこぼしていたが、ディレクターがそう言ったのもさもありなんという話。彼らの持つアドリブ力を含めた「軽妙さ」がオファーの切れない理由だ。

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