『イノセンス 冤罪弁護士』坂口健太郎が訴え続けた“正義”とは 最終回は武田真治の怪演も話題に

『イノセンス』坂口健太郎の正義

 『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系)が、3月23日の放送で最終話を迎えた。前回の第9話では、拓(坂口健太郎)と秋保(藤木直人)が共に大切な人を失った11年前の「東央大学殺人事件」と酷似した事件が発生。一連の事件の真犯人に迫るべく拓たち弁護士チームが奮闘するものの、拓と秋保の間には事件に対する思いの決定的な違いーー拓は幼馴染である浅間(鈴之助)の冤罪を信じて事件の真相を追究し続け、一方秋保は、死んでしまった人は戻ってこないという苦悩を抱えながら真犯人を探す動機を失っているーーがあることが浮き彫りになっていった。それでもなお、楓(川口春奈)からのアドバイスなどもあって真相究明の手を止めない拓。

 最終話ではかなり早い段階で、武田真治演じる神津一成が一連の事件の真犯人であると自首をする。これは、本作が犯人探しの物語に重きを置いているのではなく、司法制度の欠陥や冤罪の怖さを伝えるなど、社会への問題提起を含んだ物語を展開していくという決意を感じることができるストーリーテリングだ。拓は、浅間の冤罪を晴らすために神津が真犯人であるという確固たる証拠を探しながら、他方で「なぜ神津は3人もの女性の命を奪うことになったのか」という事件の根底に迫っていく。最終話の特筆事項として挙げられるのは、この坂口健太郎と武田真治による熱演合戦と、明らかになっていった拓の行動の“正しさ”だろう。

 バラエティ番組ではユーモラスな一面を発揮していたり、サックス奏者としてダンディな雰囲気も覗かせる武田であるが、今回は一転、サイコパスにも見える役どころを演じ、拓を刺激しながら最終話の物語を牽引するポジションに。なかでも、拓と神津が初めて面会した場面で犯行を自白する武田の温度のない声と拓を挑発する目の動きは、嫌なシーンであるが必見の演技だ。この場面での神津の言動を元にして、物語終盤で拓は、神津が過去に冤罪で苦しんだことがあるという事実に辿り着くのだが、確かにここでの武田の演技は、拓を煽りながらもオドオドしていて人間的な弱さもあり、その両面性を見事に孕んでいた。

 そんな神津への“抑えようにも抑えきれない怒り”や、父・黒川真(草刈正雄)に(実際には思い込みだったわけだが)理解してもらうことができない“悔しさ”を表出した坂口健太郎も、視聴者の心をゆるがす見事な演技だったと言えるだろう。とりわけ、「おまえは死体の冷たさを知らない」と秋保に言われてもなお、その“わからなさ”を噛み締めながら「でも僕は、浅間先輩が生きていたときの温かさを知っています」と、浅間が生きた証を訴える場面はとても感動的だ。真や秋保、あるいは神津へと向けられた拓の訴えかけが結実する形で、物語はラストの法廷の場面へと移っていく。

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