『イノセンス 冤罪弁護士』“冤罪”を生むのは誰なのか? 坂口健太郎の孤独な戦いの行方
『イノセンス』は楓の目線で展開する物語だ。整理整頓をせず、事務所の物置で寝泊まりし、服装にも無頓着。そんな拓につきあわされる楓は、机を散らかされる、弁当を取られる、実家に無理やり連れて行かれる、海に入った拓を止めに入ってびしょ濡れになるなど、これでもかとばかり災難に見舞われる。
振りまわされっぱなしの楓であるが、行動をともにすることで拓の思いを知り、ときに温かく励ますなど、拓と登場人物たちをつなぐ役割を果たすようになる。冤罪事件の弁護は世間を敵にまわす孤独な戦いだ。楓が拓を献身的に支えるのは、楓自身がセクハラを受けて大手法律事務所を辞めたという過去も影響しているのではないだろうか。
そんな2人をめぐる保駿堂法律事務所のメンバーも個性派ぞろい。パラリーガルでシングルマザーの城崎穂香(趣里)や、最初は楓に拓を監視するように命じながらも、亡き兄の思いを継いで拓の身を案じる所長の別府(杉本哲太)、最年長で拓の後見人代わりの湯布院(志賀廣太郎)など、拓の思いを受け止め力になろうとする様子が微笑ましい。
また『イノセンス』には、真実をめぐる父と子の物語という側面もある。最高検察庁の次長検事という要職にあり、「本当のことを知りたいという動機で成り立つ弁護活動はない」と話す真は、腹心の指宿(小市慢太郎)を指名し拓の主張を徹底してつぶそうとする。親友の浅間が愛用していた同じコートを着て大がかりな科学実験を行う拓が、弁護士であるにもかかわらず金欠で、実家を離れて事務所に居候するのは、高額な費用がかかる検証作業のためという事情もあるだろう。
最終話では、11年前の事件と富士田の事件に共通する人物が浮上する。殺された女子大生・花巻京香と富士田のSNS上の共通の友人「KooZ」が、11年前に殺された彩花、そして自殺した浅間の両方のブログにコメントを残していたのだ。
そんな中、楓を刺した神津一成(武田真治)が自首する。神津は拓に11年前と今回の事件の犯人が自分であると伝える。冤罪を晴らすため、親友の思いを背負って法廷に立つ拓。最終話では、「開かずの扉」と言われる再審請求は認められるのか、また最愛の妹をなくした秋保との関係の行方がポイントになるだろう。罪を犯すのも裁くのも人間なら、冤罪を生むのははたして誰なのか? 『イノセンス』が扱うテーマは友情や家族の絆を包含しながら、真実発見をないがしろにしてきた刑事司法やメディアのあり方に対する問題提起も含んでいる。
■石河コウヘイ
東京都出身のエンタメライター。右きき。三度のメシとエンタメが好き。年間のドラマ視聴本数は50作品以上。
■公開情報
土曜ドラマ『イノセンス~冤罪弁護士~』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:坂口健太郎、川口春奈、藤木直人、趣里、杉本哲太、市川実日子、志賀廣太郎、小市慢太郎、正名僕蔵、赤楚衛二、草刈正雄
脚本:古家和尚
音楽:UTAMARO Movement
音楽プロデュース:岩代太郎
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:荻野哲弘、尾上貴洋、本多繁勝(AXON)
演出:南雲聖一、丸谷俊平
制作協力:AXON
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/innocence/