『まんぷく』“老いの演技”が説得力を生む 安藤サクラと長谷川博己、夫婦の距離感の絶妙さ

『まんぷく』“老いの演技”が説得力を生む

 ヒロイン福子(安藤サクラ)の夫・萬平(長谷川博己)は、3度の逮捕を経験。紆余曲折を経て信用組合の会長になるものの、職を辞して全財産を失い、47歳にして新しい事業を始めるという、まさに波乱万丈の人生を送っている。

 萬平が一度決めたら誰も止められないことを周囲も理解していて、時には仲介役になり、時には彼を唯一説得できる存在として福子は心を尽くす。萬平も福子にだけは甘えるし、彼女の言葉には耳を傾ける。そうした2人のなんでもないやり取りを、長谷川と安藤は、その年齢に応じて絶妙な間で築き上げているのだ。

 「白髪が混じり、ちょっと疲れを感じさせる萬平がかっこいい!」とSNSなどでも評判なのは、長谷川が緩急自在に表現できる力のある役者だからこそ。見た目だけが老けるのではなく、年を重ねたぶんだけ、その何気ないやりとりにも重みが加わっている。

 萬平が福子に向かって、「僕の夢じゃない。僕と福子の夢だ」と言ったことがあった。かつて『マッサン』の、ヒロインのエリーはマッサンに「マッサンの夢は私の夢」だと伝えていた。もちろん、人は夢を見るだけでは生きていけない。

 けれど、愛する人と共に同じ夢を見ることができたら人生はどれほど豊かになるだろう。どちらかが一方的に支えたり、支えられたりというのではなく、お互いが支え合い、自分だけの夢だったものがいつの間にか2人の夢になっていることもある。長谷川と安藤の“老い演技”が単なるコスチュームプレイに終わっていないからこそ、彼らの夢に視聴者も共感できるのだ。「まんぷくヌードル」完成まであとわずか。福子と萬平の夢を、最後まで見守っていきたい。

■池沢奈々見
恋愛ライター、コラムニスト。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『まんぷく』
10月1日(月)〜2019年3月30日(土)【全151回】
作:福田靖
出演:安藤サクラ、長谷川博己、松下奈緒、要潤、大谷亮平、桐谷健太、瀬戸康史、岸井ゆきの、松井玲奈、深川麻衣、加藤雅也、牧瀬里穂、松坂慶子ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋斎
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/mampuku/

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