決して早足ではない2時間で描く10年 韓国映画『君の結婚式』はどの年代にも刺さるものがある

『君の結婚式』はどの年代の人にも刺さる

 韓国で400万人を超えるヒットとなった『建築学概論』(2012年)、台湾の作品で日本でも山田裕貴主演で映画化された『あの頃、君を追いかけた』(2011年)、チャウ・シンチー作品などで知られるヴィッキー・チャオが初監督した『So Young~過ぎ去りし青春に捧ぐ~』(2013年)など、2010年代初めには、アジアで良質な恋愛映画が多数生まれた。

 昨今の日本でも恋愛ものの映画は数多く作られているが、ターゲットがしっかり設定されていてなかなか幅広い年齢層に響くものは少なかったり、また大人の恋愛ものを作る場合には、主人公が余命いくばくもないとか、年齢差があるとか、ミステリーの要素もあるとか、なにかしらの「枷」があるものが多くなってくる。それは、まっすぐでひたむきな気持ちだけを描いただけでは、企画段階では人を引き付ける要素が「弱い」と判断されるからということもあるのかもしれない。

 前出のアジアの青春映画や、今回紹介する韓国で2018年に作られた『君の結婚式』は、こうした条件とは違っている。特に大きな「枷」があるわけではなく、これらの作品に共通しているのは、主人公たちが出会うのは学生時代で、その後10年以上の年月を経て、お互いに大人になるまでが描かれていることだ。

 『君の結婚式』でヒロインのスンヒ(パク・ボヨン)とスンヒに一目惚れしたウヨン(キム・ヨングァン)が出会うのは、高校3年生の夏のことだ。恋愛映画によくあるように、ウヨンはスンヒに一目惚れし、高校生ならではの異性への単純な興味なども描きつつ、徐々に惹かれあっていく姿が駆け足ながらも丁寧に描かれる。ウヨンがスンヒを家まで自転車で2人乗りで送っていったり、学校をサボっている最中、先生に見つかり手をとって逃げるシーン、そこで人影に隠れてドキドキする場面など、それだけでも恋愛ドラマとして十分にキラキラして見えた。

 ただ、この映画で高校時代のキラキラした恋愛が描かれるのは全体の3分の1にも満たない。その後、ある出来事によりスンヒはウヨンの元から突然去ることとなり音信不通に。1年後、ウヨンはスンヒの消息を1枚の小さな写真から知り、猛勉強をしてソウルにある大学に合格。晴れてスンヒと再会するのだった。

 再会して、すぐに恋に発展するのかと思いきや、そうはうまくいかない。浪人したウヨンより先に入学したスンヒには、すでに彼氏がいたのだった。こうして2人のタイミングはあわず、近くにいるのに、なかなか恋が成就することがない。2人がいい雰囲気になるかと思われたら、ウヨンが情けない失態を犯してしまったりと、観ているこちらまでじれったくなってしまう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる