興収2週連続1位の『アクアマン』 その空前の大ヒットがDC映画に与える影響は?

『アクアマン』がDC映画に与える影響は?

 興味深いのは、『シャザム!』の監督は『ライト/オフ』『アナベル 死霊人形の誕生』と、これまでホラー映画しか撮ったことのない若手のデビッド・F・サンドバーグで、『ジョーカー』の監督は『ハング・オーバー!』シリーズでお馴染みのコメディ畑どっぷりのトッド・フィリップスであること。さらには、2020年2月公開予定(米国)のマーゴット・ロビーが演じるハーレイ・クインを主人公とする『バーズ・オブ・プレイ』の監督には中国系女性監督キャシー・アンを抜擢。そしてつい先日、ハーレイ・クインも活躍する『スーサイド・スクワッド』続編の監督と脚本を、マーベルから追放されたジェームズ・ガンが手がけるという嬉しいニュースまで届いた。そのラインナップとスタッフの陣容から伝わってくるのは、ユニバースとしての連続性や一貫性などを度外視した、DCの恐ろしいほどの「攻め」の姿勢だ。

 まるでそれらの作品の煽りを食ったかのように、既に撮影を終えてポスト・プロダクションに入っていた『ワンダーウーマン』の続編『ワンダーウーマン 1984』の全米公開日は、2019年11月から2020年6月と大幅に後ろ倒しとなった。こちらも『ジョーカー』同様に過去(1984年)が舞台とはいえ、空前の大ヒットとなった『アクアマン』、現在進行形のシリーズとしてはキャストが宙に浮いてしまっているスーパーマンやバットマン(つい先日、ベン・アフレックがバットマン役からの卒業を正式に表明した)とも関わりの深いキャラクター/シリーズだけに、製作スタート時と大きく変わってしまった現在の状況にどのように対応していくのかが気になるところ。

 現状、スーパーマン役のヘンリー・カヴィルの去就についてはまだ正式な発表はされていないが、もし降板があったとして、それは必ずしもヘンリー・カヴィル側の意向だけによるものとは限らないだろう。『アクアマン』の大ヒットで勢いづいて、この先かつてない変革期へと突入していくDC映画にとって、ヘンリー・カヴィルがスーパーマンを演じることは過去のイメージを引きずることになるという判断があっても不思議ではない。もっとも、まだ作品を観れていないので何とも言えないが、これまでのDC映画のサイクルでいくと次の『シャザム!』でいきなりコケたりする可能性もなきにしもあらずなのだが……。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
『アクアマン』
全国公開中
監督:ジェームズ・ワン
出演:ジェイソン・モモア、アンバー・ハード、ニコール・キッドマンほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved” “TM & (c)DC Comics”
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/aquaman/

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