SABU監督が語る、『jam』撮影裏話と劇団EXILEの個性 「全員が本気で向かってきてくれた」

SABU監督が語る、『jam』撮影裏話

「鈴木くんの池のシーンは“池猿”です(笑)」

――町田さんの場合は、街を車で走っていました。町田さんにはもともと好青年のイメージがありますが、今回のタケルは、行き過ぎた好青年になっています。その辺もお話して考えられたのですか?

SABU:そうですね。すごくきれいな顔立ちで、男前。喋っていても、嘘くさいくらいの好青年(笑)。高校時代は飛行機の学校に通っていて大学は体育大だったりね。ほんとイメージ通り。そこを逆の形で生かしたいなと。どこか行き過ぎてしまって変質者っぽくなってしまっているようなおかしさ。ただやりすぎるとダメなので、“彼女のため”という軸を置いたんだけど、彼女にリップクリームを塗ってあげたりするときの目がちょっと寄っていたり(笑)、どこかおかしい。

――タケルの背景もすごく気になりました。なぜあんな車に乗っているのか、昼間は何をしているのか。

SABU:車は普通の乗用車だとおもしろくないし、ああいう昔の車ってシートが皮で赤かったりして、車の中の空間だけでも独特の世界観がある。ちょっとポップな『jam』らしい感じを出したかった。タケルの家はたぶん大富豪なんだけど、それは続編あたりに置いておこうかなと。

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――テツオ役の鈴木さんは、セリフが一切なし。アクションで見せていました。

SABU:最初に会ったときに、鈴木くんはすごくとんがってたんですよ。「俺はひとりでもやっていく」みたいな感じで。なんか、変わった人だなと思ったんですけど(苦笑)、実際にはずっと親しみやすいタイプだった。どんな映画が好きか聞いたら、『海猿』だって言うんですよ。町田くんはかなり映画を観ていて、グザヴィエ・ドランの『トム・アット・ザ・ファーム』とかの話をしていて、そんなの観てるのかと思っていたんです。一方、鈴木くんは『海猿』が好きだというのがまたおもしろくて。

――監督が鈴木さんのために池のシーンを用意したと聞きました。

SABU:“池猿”ね。最初、その意図が本人にうまく伝わっていなかったんだけど、あれは“池猿”です(笑)。鈴木くんは、基本的に男っぽい役がしたいと言っていて、だからこそ『海猿』が好きだったみたい。以前、HIROさんとも韓国映画のトンカチの使い方がすごいという話をしていたので、そうしたアクションもテツオのシーンに入れました。

 『MR.LONG/ミスター・ロン』はナイフでの華麗なアクションでしたが、『jam』は、もっとどろどろの、アクションか何か分からないくらいの激しさでやれたらいいなと。そしたら鈴木くんがすごく上手くやってくれたのでよかったです。

――銃で撃たれても生きていたり、リアルそうでリアルじゃない世界ですよね。

SABU:無敵(笑)。あと、テツオは人と繋がるのが下手で、やくざにも見放されて、結局おばあちゃんしかいない。やることも、おばあちゃんに頼まれた「駅に行ってくれ」という一つのことしかない。そこが何とも悲しい。誰にも相手にされていないというところが切なく見せられたらなと。

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――ラストの鈴木さんの表情がすごく好きです。

SABU:いいですよね。狙い通りの表情を見せてくれました。すごいと思います。実はあのシーンは脚本の段階では、“流れる灰色の雲をぼ~っと見ているテツオ”という感じで終わっていたんです。でも現実なのか幻影なのか、ある人が見えることにしました。クランクアップ日の撮影で、その数日前に思いついて変更しました。

――監督は、最終稿に変更を加えることもあるのですか?

SABU:基本的には脚本も絵コンテもきっちり描きます。現場で俳優がアドリブをしたりするのは、結局、脚本がおもしろくなかったりするからだし。俺自身が役者のころそうだったので。だからアドリブをされているような現場じゃアウト。まずはこの脚本を完璧にやれというスタンスだし、思い付きもそんなにはないです。ただ『jam』は若干慌てて書いたので、そういう余白はいつもよりはあったかもしれませんね(笑)。

――現場で、青柳さん、町田さん、鈴木さんそれぞれに他の2人を誉める言葉を、ぼそっとささやいていたと聞きました。刺激を与えるためですか?

SABU:それもあります。青柳くんは特にそうですね、3人のなかでもヒロシが中心ですし。町田くんや鈴木くんは、いまうなぎ上りなので、「頑張れよ、負けるなよ」という気持ちで青柳くんにはよく言ってました。盛り上げようというのはあったと思いますよ。競い合えよと。

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