『くるみ割り人形と秘密の王国』は実写版『ファンタジア』? ディズニーらしい想像力が冴え渡る

『くるみ割り人形と秘密の王国』を徹底解説

 数年前にエル・ファニングが主演を務め、ロシアの巨匠アンドレイ・コンチャロフスキー監督がメガホンをとった実写版『くるみ割り人形』は、超大作として制作されるも興行的にも評価的にも不振に終わり、日本ではDVDスルー。また79年にサンリオが制作した人形アニメ『くるみ割り人形』は、一部では絶大に支持される作品ではあったが、2014年にリマスターと再レコーディングを施し劇場公開されたバージョンは、“カワイイカルチャー”を売りにしたイロモノ感が強く出てしまい、映画ファンから気にも留められない作品となってしまった。

 そのような流れを汲むと『くるみ割り人形』は、どうも映画との相性が悪い物語なのかもしれないと思わずにはいられない。クリスマスの夜にくるみ割り人形をプレゼントされた少女が、ネズミの王に呪いをかけられたというくるみ割り人形に力を貸す。そしてネズミを倒して人間の姿に戻ったくるみ割り人形は、少女を妃として迎え入れる。E.T.A.ホフマンの原作での物語は大まかにいうとそのような流れになっているのだが、それを翻案したアレクサンドル・デュマと、クラシック・バレエの第一人者マリウス・プティパを経た筋書きが、よく知られている“クララ”という少女の物語である。

 おそらく、その“よく知られている”『くるみ割り人形』をイメージしながら、現在公開中のディズニーによる実写版『くるみ割り人形と秘密の王国』を鑑賞すると、何とも言えない違和感に苛まれ、拍子抜けしてしまうことだろう。映画との相性の良し悪しで言えば、またしても後者であると感じるに違いない。しかし大前提として、今回の実写版は『鏡の国のアリス』を主なモチーフにしてファンタジー性とスケール感を生み出した『アリス・イン・ワンダーランド』と同じように、ディズニーらしい想像力が爆発したオリジナルストーリーだと理解しておけば、いくらか合点がいくのではないだろうか。

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