年末企画:折田侑駿の「2018年 年間ベスト俳優TOP10」 今後も追い続けたい若手俳優の誕生

折田侑駿の「2018年 年間ベスト俳優TOP10」

(c)『あの頃、君を追いかけた』フィルムパートナーズ

 20代後半から30代前半にかけての「若手」俳優たちの活躍からは、彼らがこれまでのキャリアで培ってきたものが、さらなる大舞台で結実したという印象を受けた。

 『あの頃、君を追いかけた』という、大きな名刺代わりの作品を得たのが山田裕貴。劇中での好演もさることながら、作品を多くの観客へ届けようとするその姿勢が、とても好もしいものであった。まさに、「これからも追いかけていきたい」存在である(参考:“俳優王”への道を歩む山田裕貴)。

『半分、青い。』(提供=NHK)

 これまでにないアクティブな活躍を見せた佐藤健の存在は、やはり外せない。『いぬやしき』『億男』『ハード・コア』と主役級の映画が三作も公開され、『半分、青い。』(NHK)で国民的俳優の座へと一気に躍り出た。そして『半分、青い。』といえば、佐藤に並んでその存在を知らしめたのが中村倫也だ。『孤狼の血』『ホリデイラブ』(テレビ朝日系)、『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)などのジャンルに富んだ作品の数々で、柔和な笑顔やしなやかな所作、さらには怒声といったもので、いくつもの表情を私たちの脳裏に焼き付けた。

 『万引き家族』『空飛ぶタイヤ』から『真っ赤な星』まで、メジャー/インディーズを問わず、一つひとつの作品で職人のような活躍をした毎熊克哉には、大いに魅せられた。個々の作品カラーへの適応力の高さは、この年代の中では群を抜いているように思える。かつての東映や日活の俳優たちを彷彿とさせる佇まいが、またいいのだ。

(c)2018 映画『寝ても覚めても』製作委員会/COMME DES CINEMAS

 『昼も夜も』(2014)や『合葬』(2015)などの主演作で片鱗を覗かせてはいたものの、瀬戸康史は『寝ても覚めても』でようやくその真価を発揮できたのではないだろうか。甘いマスクを持つ彼は、どうしても“イケメン俳優”といったフィルターをかけられがちなように思えるが、今作ではそんなイメージを遥かに超えてきた。彼の姿をスクリーン内にみとめた瞬間、思わずしてしまったガッツポーズの感覚が、いまだこの右手に残っている……。

 そして最後は、東出昌大。30代へと突入し、俳優として、また、いち男性として脂の乗り始めたこの2018年は、『菊とギロチン』や『寝ても覚めても』など、彼の代表作ともなった作品が次々と生まれた年だった。自身二度目の主演舞台『豊饒の海』も成功を収め、いまや日本を代表する俳優の1人に挙げられるのではないだろうか。気品あふれる佇まいと、それを壊していく大胆不敵さ。筆者個人としては、もはや憧憬の念を禁じ得ないところだ。恵まれた体格や、出演作で海外に顔が知られたということもあり、今後は世界的な活躍にも期待である。

 10人だけ選んでみたのだが、やはり苦渋の選択であった。私たちを、ときに笑わせ、泣かせ、驚かせ、勇気づけてくれたのは、もちろん彼らだけではないのだ。これからも、彼らについての言葉を紡ぐ努力を惜しまずに生きていきたいものである。2019年、新たな才能の誕生とともに、彼らの存在を追い続けていきたい。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■公開情報
『寝ても覚めても』
テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほかにて公開中
出演:東出昌大、唐田えりか、瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、渡辺大知(黒猫チェルシー)、仲本工事、田中美佐子
監督:濱口竜介
原作:『寝ても覚めても』柴崎友香(河出書房新社刊)
脚本:田中幸子、濱口竜介
音楽:tofubeats
製作:『寝ても覚めても』製作委員会/COMME DES CINEMAS
製作幹事:メ〜テレ、ビターズ・エンド
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
配給:ビターズ・エンド、エレファントハウス
2018/119 分/カラー/日本=フランス/5.1ch/ヨーロピアンビスタ
(c)2018 映画『寝ても覚めても』製作委員会/COMME DES CINEMAS
公式サイト:www.netemosametemo.jp

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