『大恋愛』ムロツヨシは現代的な“いい男”? 戸田恵梨香との10年愛に心掴まれる理由
お金や見た目より、今、ときめきを感じるのは優しさとユーモア
恋愛ドラマと言えば、イルミネーションの煌めくオシャレスポットが定番だったし、恋におちる相手はちょっと影を背負っているか危険な匂いがするか、あるいはぐうの音も出ない完璧王子と相場が決まっていた。でも、本当に幸せやときめきを感じるのは、実はもっと平凡なものだったりする。優しくて、ユーモラスで、いつも尚を笑わせようとしてくれる真司は、間違いなく現代的な意味での“いい男”だ。
宇多田ヒカルが以前、「私が人生のパートナーに求めるものランキングの最下位:経済力」とツイートしたことがあったけど、女性の社会的自立が進む今、かつてもてはやされた“三高(高学歴・高収入・高身長)”はすっかり死語に。たとえ宇多田ヒカルや尚のように圧倒的な成功をおさめていなくても、“三高”よりもっと大切なものがあるんだと気づいている女性たちは増えている。
『大恋愛〜僕を忘れる君と』は、そんな時代の流れも踏まえた上で、今、恋愛に求めるときめきや幸福感をしっかり描けているところがいい。ラグジュアリーホテルのスイートルームより、川辺を臨む高台で夜が明けるまで延々語り続ける。そんな恋を、私もしたい。若年性アルツハイマー病というショッキングな題材を扱いつつ、その中で描かれる恋愛像は、友達の結婚式で流れるプロフィールムービーぐらいナチュラルで等身大。
「尚がガンでも、エイズでも、アルツハイマーでも、心臓病でも、腎臓病でも、糖尿病でも、歯周病でも、中耳炎でも、ものもらいでも、水虫でも、俺は尚と一緒にいたいんだ」
真司の愛の言葉は、バッチリ決まり切っていなくて、どこか笑える。でも、そんな飾らない言葉にときめいて仕方ないから、多くの人がこの恋に夢中なのだ。
不穏なる影・公平が投げかけるメッセージとは
そんな本作も後半に突入し、雲行きが怪しくなってきた。これまではタイトル通り直球の大恋愛を見せてきたが、尚と同じ若年性アルツハイマー病におかされた公平(小池徹平)という変化球の登場で、展開は一気にスリリングに。サイコパスのようにも見える公平の思惑は何なのか。尚と真司にどんな不和をもたらすのか。楽観を許さぬ局面だが、同じ病気に苦しむ尚と公平を分けたものがあるとすれば、それはそばに大切な人がいてくれたかどうか。
尚と違い、病気が判明するや妻に逃げられた公平は、孤独の淵に立たされている。その怒りと嘆きが、彼の常軌を逸した行動を呼んでいるのだとしたら、公平という存在が視聴者に投げかけるメッセージはひとつ。人は、ひとりでは生きられない。どんな悲しみも、絶望も、そばに誰かがいてくれたら分け合える。そう私たちに伝えようとしているのではないかなと思う。
そんなサイドストーリーも絡めつつ、愛する人との想い出で満ちあふれた尚と真司の10年愛も残りわずか。その結末を最後までしっかりと見届けたい。
■横川良明
ライター。1983年生まれ。映像・演劇を問わずエンターテイメントを中心に広く取材・執筆。人生で一番影響を受けたドラマは野島伸司の『未成年』。Twitter:@fudge_2002
■放送情報
金曜ドラマ『大恋愛~僕を忘れる君と』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54
脚本:大石静
プロデューサー:宮崎真佐子、佐藤敦司
演出:金子文紀、岡本伸吾、棚澤孝義
出演:戸田恵梨香、ムロツヨシ、富澤たけし(サンドウィッチマン)、杉野遥亮、小篠恵奈、黒川智花、橋爪淳、夏樹陽子、草刈民代、松岡昌宏
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/dairenai_tbs/
公式Twitter:@dairenai_tbs