小瀧望、コミカルな演技が物語のスパイスに 『僕とシッポと神楽坂』相葉雅紀との絶妙なコンビ

小瀧望、コミカルな演技が『僕坂』のスパイスに

 特に印象的だったのは香子のシーンだ。香子は、ロミの新しい飼い主を探すうちに「自分がロミを飼いたい」と思うようになっていた。そんな折、広樹が優しそうな飼い主を見つけ出す。彼が見つけた飼い主は、ロミを優しく迎え入れてくれる夫婦だった。しかしその譲渡の場で、香子が浮かない顔をしていることに達也が気づく。達也はその場で「大丈夫?」と気遣う。一方広樹は、香子がその場を離れた後泣き出したのを見て困惑するばかりだった。優しそうな飼い主を見つけるのが大変だったと語る彼にとって、香子が抱き始めたロミへの愛着は予想外だったのかもしれない。

 香子の複雑な心境に気づきながらも、必要以上に言葉をかけず、彼女の意思を尊重する達也。ロミを大切にしてくれる飼い主探しに没頭し、「自分が飼いたい」と涙する彼女には困惑してしまった広樹。彼らの対比がはっきりと描かれたからこそ、香子のロミに対する愛着が視聴者に伝わったのではないだろうか。

 回を重ねるごとに、相葉の真摯な演技の影響が感じられる。誰に対しても穏やかな態度を崩さない達也だが、大地や香子には大人として、獣医師として、動物との付き合いかたを丁寧に伝えていく。広樹とは良い先輩・後輩の関係でありながら、手術の現場では信頼できる仲間として接する。頼子に対しては「姉さんができて嬉しかった」と話し、義姉として慕う姿勢を崩さない。そしてトキワに対しては、彼女に対する好意を感じさせながらも、信頼できるパートナーとして日々向き合っている。

 小瀧が演じる広樹も、その明るくあっけらかんとした性格が、シリアスなシーンの合間に導入されるコミカルなシーンとして良いスパイスとなっている。

 「家族の一員」と向き合う物語には、時に人の心を締め付けるような瞬間がある。しかし相葉と小瀧の演技に求められているものが違うことによって、心癒されるドラマという位置づけが崩れることなく、シリアスなテーマに向き合うことができるだろう。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
金曜ナイトドラマ『僕とシッポと神楽坂』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜0:15(一部地域で放送時間が異なる)
出演:相葉雅紀、広末涼子、趣里、小瀧望(ジャニーズWEST)、大倉孝二、村上淳、矢柴俊博、矢村央希、 かとうかず子、イッセー尾形
原作:たらさわみち『僕とシッポと神楽坂』(officeYOU 集英社クリエイティブ)
脚本:谷口純一郎、国井桂
監督:深川栄洋
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:都築歩(テレビ朝日)、松野千鶴子(アズバーズ)、岡美鶴(アズバーズ)
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/shippo/

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