名バイプレイヤー・川瀬陽太が語る“サブリミナル俳優”としてのスタンス 「どんな現場もやりがいの熱量は同じ」

名バイプレイヤー・川瀬陽太が語る

4DX、3Dに疲れた人こそ『体操しようよ』

ーー川瀬さんが年長となる現場も多くなってきたと思うのですが、本作『体操しようよ』の主演は草刈正雄さんです。共演されていかがでしたか?

川瀬:草刈さんが主演を務めた『復活の日』『汚れた英雄』など、角川映画は僕の青春時代の作品です。草刈さんはちょっと位相が違うというか、スクリーンの中のスターであり、非日常の存在でした。久々に緊張もしましたが、同じ役者として芝居をご一緒できることは本当にうれしかったです。

――しかし、本作の草刈さんは、定年退職をして、一人娘からも疎まれる冴えないお父さんという役柄です。

川瀬:草刈さんだからこそ、成立した作品だと思います。本当に冴えない方がお父さんを演じたら、映画にはならないと思います。90年代後半のVシネや、ジャンル映画もそうだったのですが、ただの主演俳優ではなく、“スター”だから成立する映画がある。『釣りバカ日誌』なんかもそうですね。スターがいて、脇役として徳井優さんや平泉成さんが輝いているあの感じ。そういった作品にこれまで出演することができなかったので、映画を彩る脇役の1人になれたことは、非常にゴージャスな体験でした。

――菊地健雄監督作すべてに出演している川瀬さんからの目からみて、その作家性はどんなところにあると感じますか?

川瀬:菊地くんの場合は長い助監督時代を経ての叩き上げでもあるんですけど、本人は嫌がるかもしれないのですが、“シネフィル”的側面もあるんです。映画的教養をしっかり持っているから、単に「体操の映画ですよ」という舐めたものは一切なくて、画作りから演出まで非常に細かく考えている。そのあたりは撮影の佐々木(靖之)くんともよく話し合っていました。

ーー菊地監督の作品は階段や丘など、高低差を上手く利用されている印象があります。

川瀬:今回も巧みに撮っていますね。菊地×佐々木コンビは演技をしていても、仕上がりがどうなっているんだろうという楽しみがあります。さまざまな監督の助監督として、いろんな題材に向き合って経験を積んだからこそ、普遍的な人々の描き方にもたくさんの引き出しがあるんだと思います。

ーー下手したら再現ドラマのような雰囲気になりかねない題材です。

川瀬:そうなんですよ。これをただ右から左で撮っていってしまったら“顔のない”作品になってしまったと思います。草刈さんや和久井(映見)さんの安定した演技があったからこそ、ある種実験的なこともできたのかと思います。菊地くんの口から、「本作のイメージはウェス・アンダーソン『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』」と出たときは、「大丈夫か?」と思いましたけど(笑)。きたろうさんや、(片桐)はいりさん、(木村)文乃ちゃんに渡辺(大知)くんと、みんなが“映画を知っている”空気がありました。2歩3歩先で会話が成立する、そんなキャスティングだったからこそ魅力的な映画に仕上がったと思います。

ーー改めて本作の魅力はどんなところにありますか?

川瀬:4DXや3D映画に疲れた人に観てもらえたらと思います(笑)。アトラクションのような映画がどんどん増える中で、本作はいい感じで緩いです。激しい映画もいいですが、ときには落ち着いて、お風呂に入るような感じの映画があってもいいのかなと思います。

(取材・文=石井達也)

■公開情報
『体操しようよ』
全国公開中
監督:菊地健雄
出演:草刈正雄、木村文乃、きたろう、渡辺大知、和久井映見
脚本:和田清人、春藤忠温
製作:「体操しようよ」製作委員会
配給:東急レクリエーション
(c)2018「体操しようよ」製作委員会
公式サイト:taiso-movie.com

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