萩原みのり×久保田紗友×菊地健雄『ハローグッバイ』鼎談 「友達とは何か」

萩原みのり×久保田紗友×菊地健雄鼎談

 『ディアーディアー』で長編監督デビューを飾った菊地健雄監督の第二作目『ハローグッバイ』が現在ロングラン公開中だ。期待の若手女優、萩原みのりと久保田紗友を主演に迎えた本作は、クラスメイトでありながら全く接点のなかったふたりの女子高校生が、認知症の女性との出会いをきっかけに、“友情”を育んでいく様子が描かれる。リアルサウンド映画部では、菊地健雄監督、萩原みのり、久保田紗友の3名にインタビュー。ふたりが信頼を寄せる菊地監督の意外な一面や、撮影中の裏側、「友情とは何か」という問いまで、たっぷりと語ってもらった。

菊地「ふたりが輝きあえる空気作りを意識していました」

――ふたりの目から見た菊地健雄監督の印象は?

萩原みのり(以下、萩原):怖かったよねえ(笑)。

久保田紗友(以下、久保田):怖かった(笑)。

萩原:菊地さんとは、助監督をされているころから一緒にお仕事をさせていただいていました。本当に優しくて大好きな方なのですが、映画になるとちょっと頑固なところもあって(笑)、そこがまた好きなんですけど。だから、私が初めて主演を務める映画の監督を、菊地さんが務めると知ったときはすごくうれしかったです。初めて映画に出演したときからずっと知っている方だったので、すべてを委ねられる安心感がありました。

菊地健雄(以下、菊地):助監督と監督の時ではやっぱり違った?

萩原:全然違いました! 助監督のときはちょっと落ち込んでいるときに、「どうなの?」って声をかけてくれていて、さりげない優しさが素敵だったんです。でも、今回は“監督”の菊地さんで、距離を置かれていました。分かりやすく言うと、笑顔が減っていて。でも、お昼に弁当を食べているときとか、ふいに優しいモードが出てくると、ちょっとうれしさがありました(笑)。

久保田:初めて菊地監督にお会いしたときは、すごく優しそうな方だと思いました。でも、私が演じた葵は、孤独を抱えている役だったせいか、監督からはみのりちゃんとはまた違う距離を取られている感覚があって。その距離感はリハーサルでも、本番でも変わらなくて、すごく不安になりました。でも、そのおかげで、葵を演じるときにスッと入ることができたのかなと思っています。

――菊地監督はふたりの役柄にあわせて接し方も変えていたと。

菊地:はづきと葵という、対照的なふたりのキャラクターがいて、これまで一緒にお仕事をしてきた萩原さんと、初めてご一緒する久保田さんがキャスティングされた。ふたりが演じるキャラクターについては、言葉で細かく説明するのではなく、理屈ではない部分で自然と役と一体化してくれたらという思いがありました。今回は撮影の前段階の準備期間もまとまった時間をいただけたので、意識的にふたりへの接し方も変えていた部分はあります。久保田さんとは距離を取っていたので、不安に思わせてしまった部分もあったかもしれません。同世代のふたりが、互いに競い合って、輝きあえる空気を作ることができるようにと意識していました。

――久保田さんは監督から距離を置かれて不安になった部分はありましたか。

久保田:まったく話しかけられなかった、というわけではないのですが、みのりちゃんとの接し方の違いはすごく感じていました。私と全然違うって(笑)。

菊地:すいません(笑)。葵は誰にも頼ることができず、孤独を抱えている役柄だったので、話し合いながら答えを出すのではなく、ある程度突き放したところから生じる不安な心も捉えることができればと思っていました。撮影初日から、ふたりにとって難しいシーンの連続だったのですが、十分な準備期間があったおかげか、それぞれのパーソナルな部分をはづきと葵に落とし込んでくれていて。ふたりが女優として顔付きが変わっていくのを一番近くで見られたことはうれしかったですね。

萩原:クランクイン前に、はづきと関係する人との距離感をすべて探らさせてもらったのが大きかったです。だから、現場でも「はづきだったらこうする」と考えるのではなく、そのままの素の状態に近かったと思います。「萩原みのり」に戻る瞬間もなかったと言えるかもしれません。現場ではいい意味で嘘を付いていなかった。紗友ちゃんが演じる葵を目の前にして、思った気持ちをそのまま出しただけでした。ただ、そこにいるだけでいいという空気感を出すことができたのは、菊地監督のおかげだと思ってます。

菊地:いやいやいや。僕個人というよりも、出演して下さった皆さん、スタッフ、プロデューサー、みんなが同じ方向を向いて作ることができたことが一番大きいと思います。特に印象的だったのは、認知症の悦子(もたいまさこ)さんが昔の友だちである和枝(木野花)さんと蕎麦屋で再会するシーン。キャリアの長いおふたりが、劇中の関係性さながらに控室でも友人として楽しそうに会話をしていて。それを久保田さんと萩原さんも覗いている。カメラはまわっていないんですが、控室の風景が映画の中の関係性と連動していてとてもうれしかったんです。映画を撮るという以前に、ふたりが女優としてかけがえのない時間を過ごしてくれている、それを思ってグッとなるところがありました。

久保田:私も改めて、こんなに素敵な先輩たちと一緒にお芝居できていると思って、すごくうれしかったです。

萩原:先輩たちの話を近くで聞けるだけでも幸せなのに、一緒に作品を作ることができたことが本当にうれしかったです。私たちもおふたりのような関係性になれたらなって。

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