相葉雅紀とイッセー尾形が伝える命の重み 『僕とシッポと神楽坂』愛情が滲む演出が光る

『僕とシッポと神楽坂』が伝える命の重み

 カナメを残して逝くことを不安がる千津は、今は亡き夫とともに営んできた扇店をたたみ、店の形をそのままに住んでくれる人とカナメの新しい飼い主を探していた。しかし、千津が予期せぬタイミングで倒れたことや、扇店を購入しようとした若い夫婦が再開発事業の関係者だったことが分かったことから、千津は考えを改め扇店に戻ってくる。カナメのために生きようと決心した矢先、カナメに重大な病気が判明し、手術シーンが始まる。

 カナメの手術は成功する。しかし徳丸が「動物たちの老人ホームをつくり、千津がいなくなってもカナメが寂しくないようにする」と伝えると、千津はその言葉に安心して、長年営んできた扇店で人知れず静かに息を引き取る。亡くなった千津を見つけた徳丸とトキワの目には、彼女に寄り添うカナメの姿が映った。

 達也がカナメの命をつなぎ、徳丸は千津を見送る。この対比は、悲しくもあたたかい演出だった。動物たちの心に寄り添い、飼い主の想いを真摯に受け止める達也だからこそ、難しい手術を成功させることができたのだろう。長年彼女たちを見守り続けてきた徳丸がいたからこそ、千津は安心して逝くことができたのだろう。達也と徳丸の描写によって、「家族の一員」として大切にされているペットの存在意義や、彼らを大切に育てる飼い主たちの深い愛情が浮かび上がる演出だった。

 第3話では、相葉の“普通の青年”っぽさと動物に対する真摯な姿勢、イッセー尾形のおちゃらけつつも芯のある演技が、「家族の一員」であるペットと飼い主との関係性を自然に伝えてくれた。今作は、視聴者に癒しを与えながらも、命の重みはしっかりと伝えてくれるドラマである。今後も、おだやかな演出から伝わる命の重みを感じとっていきたいものだ。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
金曜ナイトドラマ『僕とシッポと神楽坂』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜0:15(一部地域で放送時間が異なる)
出演:相葉雅紀、広末涼子、趣里、小瀧望(ジャニーズWEST)、大倉孝二、村上淳、矢柴俊博、矢村央希、 かとうかず子、イッセー尾形
原作:たらさわみち『僕とシッポと神楽坂』(officeYOU 集英社クリエイティブ)
脚本:谷口純一郎、国井桂
監督:深川栄洋
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:都築歩(テレビ朝日)、松野千鶴子(アズバーズ)、岡美鶴(アズバーズ)
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/shippo/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる