Twitterでは怒りの声も 『獣になれない私たち』田中圭から新垣結衣への“愛してる”を考える

『けもなれ』“愛してる”を考える

 “愛”の形は人それぞれで答えがないため、晶と京谷がどのような状態にいれば愛し合っているかというのはもちろん回答できないのだが、晶が愛されてないと思ってしまうのは妥当だ。自己犠牲こそが愛とは言いすぎではあるが、大切な相手が苦しさを感じる状況を緩和することに抵抗がないのが愛情のうちの1つではないだろうか。

 だから上記のことを愛と考えたとき、ただでさえあまり知りたくない元カノという存在が、心のみならず物理的にも京谷の生活に存在している状況は晶にとって酷だ。それが4年間も解消されないということは、「ないがしろにされている」と感じるのは当然だ。愛しているなら、どうして苦しめ続けられるのだろうか。それに対して京谷が晶に言った上辺だけの「愛してる」が、晶の辛さにさらに拍車をかける。

 こんな関係誰から見ても間違っているわけで、呉羽の意見はもちろん正しいのだけれども、正論なんてあんな精神状態の2人にとって刃物以外の何物でもない。第2話で恒星(松田龍平)が、人間は進化するにあたって色んな能力を失ったと言っていたが、問題を頭で考える能力は充分にあるのに動けない晶と京谷はまさに獣になれない2人だ。

 そんな重苦しいストーリーが進む中で、ラストの恒星(松田龍平)が晶を見送って道を歩くシーンは、『ラ・ラ・ランド』の「A Lovely Night」の場面のような美しさを感じた。もちろんあんなダイナミックでロマンティックな展開ではないのだが、第1話から晶と恒星は2人並んでよく歩く。しかも、第2話では教会の鐘のために、険しい坂を共に乗り越えていた。『ラ・ラ・ランド』の同シーンでは、タップダンスが2人の高揚を表現する手段として使われていたが、“歩く”という一見地味な行動も運動で、互いの心拍数は上がっていくため、水面下で晶と恒星の距離は徐々に近づいていると思える。

 晶と恒星の間に溝ができただけでなく、さらに呉羽が京谷にキスをするという衝撃のシーンで幕を閉じた第3話。呉羽の直感的な行動には驚かされるばかりだが、あまりにも共感できる悩みを抱えたキャラクターが多数いる中で、まったく読めない動きをする呉羽に翻弄されることが意外と快感だったりする。

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(文=阿部桜子)

■放送情報
『獣になれない私たち』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:新垣結衣、松田龍平、田中圭、黒木華、菊地凛子、田中美佐子、松尾貴史、山内圭哉、犬飼貴丈、伊藤沙莉、近藤公園、一ノ瀬ワタル
脚本:野木亜紀子
演出:水田伸生
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:松本京子、大塚英治
協力プロデューサー:鈴木亜希乃
制作会社:ケイファクトリー
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/kemonare/

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