視聴者の共感に疑問符 新垣結衣主演『獣になれない私たち』は“社会派ドラマ”ではない

『獣になれない私たち』視聴者の共感に疑問符

 新垣結衣主演×野木亜紀子脚本の『逃げ恥』タッグということから、ドラマ好きの間では今秋ドラマ期待作の筆頭として挙げられてきた『獣になれない私たち』(日本テレビ系)。第1話では、ガッキーこと新垣結衣演じるヒロイン・晶が、職場や取引先から受けるパワハラ、セクハラてんこもりのブラックな働き方と、引きこもりの元カノ・朱里(黒木華)を同居させたまま煮え切らない状態の恋人・京谷(田中圭)との関係性などについて、「可哀想」「辛すぎる」という声が続出した。

 とともに、自身の現状や過去と重ね合わせて共感する声が多数挙がっていた。しかし、これには、正直驚いた。「営業アシスタント」なのに、営業の仕事を押し付けられ、新人の尻拭いをさせられ、社長に無理難題を1人押し付けられ、それでも仕事の能力が評価されるのでなく「社長は面食いだから」で片付けられるなんてことが、共感できることなのだろうか。また、取引先に土下座を要求され、その上、頭を撫でられるなんて屈辱的なことが「共感」できることなのか。

 しかも、晶が目を奪われたカッコいいファッションの女性(菊地凛子)に対し、「ああいうのってさ、どこにアピールしてるんだろうな」「あれ好きな男、そうそういなくない?」という京谷にも、普通はカチンときそうなところ、「着たい服を着てるだけじゃないの?」と言いつつ、「京谷のお母さんと会う日、ああいう格好で行こうかな」と茶目っ気たっぷりに返すオトナ度の高さには、感心する一方で、「こういう男にはそんな優しい言い方じゃ、何も通じないのにな」とイライラしてしまう。

 挙げ句、晶は第1話ラストにおいて、サングラスをかけ、「強そうな」新しい服とブーツを身に着けて出社し、「業務内容の改善要求」をする。これに対し、視聴者からは「新しい服とブーツを買いましたのところが良い」「かっこよすぎていとしすぎて」「カタルシスをありがとう」「私もやりたい」などの声が続出していた。

 こうした反応にも正直、驚いた。正当な要求なのだから、別に新しい服や靴なんて要らないのではないかと思ったし、まるで失恋して髪を切るような古典的な手法に思えたからだ。

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