佐野勇斗、着実に広げる表現の幅 『青夏 きみに恋した30日』『3D彼女 リアルガール』から分析する
オタクと美女の恋愛といえば、『電車男』のように冴えない男子が外見も磨いていくストーリーかと想像する人も多いだろうが、『3D彼女』はそうではない。佐野はイケメン力を封印し、最後の最後までその武器を使わずに戦い続ける。見た目に大きな変化を付けずに、つっつんの内面的な成長を描いているところが作品のひとつの醍醐味であり、ほろりと感動を呼ぶ要因でもある。コテコテの“胸キュン”ではなく、つっつんの素直な優しさを通してじんわりと広がる“胸キュン”は不意打ちで、“ヤラれた”感が心地いいのだ。
そして、劇中の同級生たちがつっつんの人柄に惹かれていくのと一緒になって、こちらもいつしか、彼のことが大好きになってしまう。その理由は、もちろんつっつんの人柄にもあるのだが、佐野が心から “つっつん役”を満喫していることによるところが大きい。佐野は今作で初めて本格的なアドリブにチャレンジしたことを本サイトのインタビューでも明かしているが、この作品で佐野が役者として一段階ステップアップしたことを客席からも確信できるほどに、イキイキとした演技を披露。溢れんばかりのパワーで、物語へと引き込んでくれるのだ。
11月公開の映画『走れ!T校バスケット部』には、バスケ部のキャプテン・矢嶋俊介役で出演。さらに又吉直樹原作の『凜』(今年度公開予定)では本郷奏多とW主演を務めるなど、その活動は勢いを増すばかり。話題作への出演という実績のみならず、作品ごとに着実に表現の幅を広げてきた佐野勇斗。まだ20歳、今後の活躍にも期待したい。
■nakamura omame
ライター。制作会社、WEBサイト編集部、専業主婦を経てフリーライターに。5歳・7歳の息子を持つ2児の母。ママ向け&エンタメサイトを中心に執筆中。Twitter
■公開情報
『3D彼女 リアルガール』
全国公開中
出演:中条あやみ、佐野勇斗、清水尋也、恒松祐里、上白石萌歌、ゆうたろう、三浦貴大、神田沙也加(声の出演)、濱田マリ、竹内力
原作:那波マオ『3D彼女 リアルガール』(講談社『KCデザート』刊)
監督:英勉
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2018 映画「3D彼女 リアルガール」製作委員会 (c)那波マオ/講談社
公式サイト:3dkanojomovie.jp