『アベンジャーズ』シリーズへの重要な布石? 『アントマン&ワスプ』で描かれた量子力学を考察

『アントマン&ワスプ』の量子力学を考察

 「シュレーディンガーの猫」が持つ矛盾を説明する考え方に、ヒュー・エヴェレット3世の提唱した「多世界解釈」というものもある。それは、あり得る選択や結果の数だけ、分岐された別の「並行世界」が生み出されるというものだ。例えば、車を運転していて、目の前に人が飛び出してきたとき、とっさにハンドルをどちらに回すかによって、未来は変わるかもしれない。右に回せば危機を回避できるかもしれないし、左に回せば他の車に追突するかもしれない。そのどちらの未来も、世界ごと存在するというのだ。これがもし真実であれば、シュレーディンガーの猫は、生きている状態と死んでいる状態に世界ごと分岐しているため、それぞれの世界では片方の結果しか表れず不自然に見えないということになる。

 そして最近の研究によると、分岐された世界は、相互に干渉し合っている可能性があるという。だとすれば、ゴーストの肉体は、消えた瞬間に他の並行世界に現れており、その世界に何かしら影響を与えていると考えられないこともない。

 分岐された分だけ世界が存在するというなら、何か取り返しのつかない事態が起きたときに、それが起きなかった並行世界も、どこかに存在しているかもしれない。ここで思い出されるのは、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)が見たという、あらゆる選択肢によって分岐された未来世界である。そう考えると、全く関係がないと思われていた本作の内容と、アベンジャーズの命運はつながりを見せることになる。

 現時点では、アントマンで描かれた量子世界と『アベンジャーズ』次作がどのように関わってくるのかは不明である。しかし、本作『アントマン&ワスプ』の思わせぶりな展開を見る限り、今後アントマンが重要な鍵を握ることになる可能性は高いと思われる。

 小さな世界が、大宇宙を左右するかもしれない。だとすれば、それを至るところで暗示していた本作は、アントマンという題材をフルに活かしたダイナミックな作品だったということになるだろう。本作でばらまかれた要素が、どのように着地するのか。様々な期待を込めつつ、そしてアントマンがこれまで以上に活躍をするのを想像しながら、『アベンジャーズ』次作を楽しみに待ちたいと思う。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『アントマン&ワスプ』
全国公開中
監督:ペイトン・リード
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:ポール・ラッド、エヴァンジェリン・リリー、マイケル・ダグラス、マイケル・ペーニャ、ハナ・ジョン=カーメン、ローレンス・フィッシュバーン
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)Marvel Studios 2018
公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/movie/antman-wasp.html

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