大嘘が現実を変えたーー『カメラを止めるな!』上田慎一郎監督&市橋浩治Pが語る“映画が持つ力”

 わずか2館から現在220館以上の映画館で公開されている『カメラを止めるな!』。6月23日に公開され日本列島を“感染”させる勢いで人気を広げ続ける本作は、“37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイブムービー!”……を撮ったヤツらの話。“ネタバレ厳禁”にも関わらず、SNSを中心とした口コミは止まず、シネコンから小さな町の映画館までを大いににぎわせている。

 今回リアルサウンド映画部では『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督と市橋浩治プロデューサーにインタビュー。次々に拡大公開が決まる大ヒットへの思いや映画を作り続けることなどを聞いてきた。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

ヒットの大きな要因は“お客さん”

左から、市橋浩治プロデューサー&上田慎一郎監督

ーーどんどん拡大公開されますが、ひとまずヒットまでの経緯をおさらいさせてください。

上田慎一郎(以下、上田):最初はインディーズ映画としては異例の盛り上がりの中で公開に突入したのですが、最初の1週間は池袋シネマ・ロサは満席ではなく、平日は5〜60人の日もあったんです(参考:池袋シネマ・ロサの座席はCINEMA ROSA 1が193席、CINEMA ROSA 2が177席)。新宿K's cinemaもギリギリで満席になったときもあって、1週目は簡単に席が埋まったわけではありません(参考:K's cinemaの座席は84席)。それから2週目以降に、だんだん人が入り切らなくなって、朝から並ばないといけない状態になりました。だから1週目は必死になってSNSで発信していました。

ーー公開当初の動員目標はどれくらいだったのですか?

上田:僕と市橋さんとキャストが揃って宣伝会議をしましたね。

市橋浩治(以下、市橋):その時は5,000人でした。『カメラを止めるな!』は監督&俳優養成スクール・ENBUゼミナールのシネマプロジェクト第7弾目の作品なのですが、これまでの作品は2,000人くらいの動員実績があったんですね。だから「2,000人は多分いくけれど、2館で5,000人動員できれば良いよね」という考えで動いていました。新宿K's cinemaが1日3回上映で、池袋シネマ・ロサが1日1回しかなかったので2館分の動員数を計算すると、ほぼ8割入らないとダメくらいの数字だったんです。

ーー見込みを大きく上回ったわけですが、「キテる!」と感じたのはいつ頃でした?

市橋:2週目以降に興行面での手応えを感じました。その当時、新宿K's cinemaと池袋シネマ・ロサの支配人と話をした時に、2館だけではまかないきれないので館数を広げていいという話ををいただいたんです。それから、川崎のチネチッタや渋谷のユーロスペース、イオンシネマ大宮で2館から5館の拡大が決定しました。でも、それでも足りないくらいのお客さんの反応があって、「これは凄いことになりそうだ」と思いましたね。それが2週目が終わり3週目に差しかかる頃でした。あとお客さんが熱狂的になったもう1つの理由は、毎日誰かが舞台挨拶に登壇していたからだと思うんです。僕たちはインディペンデントの中でやっているので、キャストたちのスケジュールが割とゆるく(笑)、毎日のようにサイン会やイベントを開催していました。ですから、お客さんたちは、その舞台挨拶やサイン会を含めた、ある種の劇場エンターテインメントとしてこの作品を楽しんで帰っていただいたようにも思います。「この映画を広めたい」とお客さんが宣伝マンになっていただけたのもヒットの大きな要因です。

上田:1週目のお客さんはインディーズ映画ファンの50代〜60代くらいのおっちゃんが多かったんですが、2週目から若者もどんどん増えてきた印象です。でも、僕自身は公開館数や動員数のような目に見える凄い数字が出ても、なかなか実感しにくくて……。だから街で『カメラを止めるな!』のTシャツを着ている人にすれ違ったりとか、女子高生が女子トイレで『カメラを止めるな!』の話をしていたというツイートや、Tシャツを着ていたら街中で「面白かったですか?」と声をかけられたというツイートを見たり、街の声を聞き始めたときに「凄いことになってきたな」という思いを抱きましたね。

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