堕ちていく姿まで美しい 『高嶺の花』石原さとみの“狂気の演技”に思わず息をのむ
また、“もう1人の自分が見えない”と狂ったように花を活けるももを、ななが心配して見に来る場面は、第8話の中でも息が詰まるシーンだったろう。次期家元に決まったななは、第7話の姿から一転し、元の“いい子”に戻っていた。そんな姿を見てももは、心優しいななに対して、言葉のナイフを容赦なく振りかざす。「ルリ子さんへの嫉妬も憎しみも、中途半端。『許さない』っていうのも所詮口だけのこと」
ももの言葉を受け、座り込んでしまったななだったが、それでも姉をなんとか救おうと直人(峯田和伸)に助けを求めに行く。恋心はまさかの母に破られ、大好きな姉を自分のせいで壊し、さらに罵倒される。こんな不憫な人生あっていいのだろうか。“格差恋愛”を描いているはずなのに、姉妹の歪んだ愛情があまりにも美しすぎて、本題そっちのけで釘付けにされてしまう。
ここ何年も書店では、石原が表紙を飾る雑誌を見ない日はないほど、彼女は女性の憧れとして君臨し続けていた。しかし、『アンナチュラル』でもそうだったように、今年の石原からは可愛いだけじゃない、一歩その先への進化を感じ取れる。また、役柄に応じて自分でメイクを考えていることで有名な石原だが、数年前の血色メイクに比べ、本作や最近のファッション誌で見せているチークを控えた表情からは、大人の気品が醸し出されている。
それが功を奏したのか、第8話は、前半の狂気の演技から、直人に助けられた時に見せた子供のように無邪気な表情まで、石原の幅広い魅力が凝縮された回だったように思える。早いことにラスト2回となった『高嶺の花』。その整った容姿ゆえに、 “可愛い”の部分にスポットライトが当たりがちな石原と芳根の、真の実力を照らし出した本作の功績は大きい。
(文=阿部桜子)
■放送情報
『高嶺の花』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00放送
出演:石原さとみ、峯田和伸、芳根京子、千葉雄大/升毅、十朱幸代/戸田菜穂、小日向文世ほか
脚本:野島伸司
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:松原浩、鈴木亜希乃、渡邉浩仁
演出:大塚恭司、狩山俊輔、岩崎マリエ
(c)日本テレビ
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