伊野尾慧と戸塚祥太が兄弟役を熱演 作り手や演者の気概感じる『トーキョーエイリアンブラザーズ』

 植木やたばこの吸い殻などとりあえず何でも口に入れようとする夏太郎と、地球暮らしに慣れてはいるが歯磨き粉を常飲している冬ノ介。そのあたりは人間離れした感覚ではあるが、冬ノ介がゆかと秋子を怒らせてしまったように、他人の気持ちを推し量ったつもりでも対応を間違えてしまうのは宇宙人でなくともよくあること。人と人との関係は「めんどくさい」の連続で、でも「だからこそおもしろいんだよね」。冬ノ介の核心を突くつぶやきにたびたび頷かされる。インターネットでこっそり「愛」を検索する夏太郎の気持ちもむろんわからなくもなく、兄弟の目を通して見る世界に新たな気づきがある。

 笑顔を絶やさない愛されキャラだがどことなく掴みどころがなく、心の奥底にはひやりとしたものを抱えていそうな冬ノ介。寡黙で不器用でとっつきにくいがもしかして人間に近い感覚を持ち主では?と思わせる夏太郎。対照的な性格の兄弟役が伊野尾と戸塚、まるで当て書きしたようにそれぞれにとてもよく合っている。今後、東京で暮らす人間たちと触れ合うことで兄弟の内面にどんな変化が生まれていくのか。伊野尾も戸塚も細かな心の機微をのびやかに演じてくれることだろう。

 『泣くな、はらちゃん』(日本テレビ系)や『トドメの接吻』(日本テレビ系)など多くのドラマを手掛けてきた菅原伸太郎と、松本大洋原作のアニメーション『鉄コン筋クリート』や『ヘヴンズ・ドア』のハリウッド出身、マイケル・アリアスが監督を務める。劇伴はアリアス作品に携わってきたPlaidが担当している。製作陣の過去作を見返してみると、共通点が見えてまた別の角度から楽しめる。

 夏太郎と冬ノ介、キッチュな本来の姿や研究用の資料として飼われているさまざまな動物、オープニングの映像など“かわいい”をたっぷり詰め込み、ときに際どい台詞やグロテスクな演出で鋭さを放つ。CGや特殊メイクを使った細部までこだわりが感じられ、見どころがたくさんある。たった30分のドラマなのが実に惜しい。

■古閑万希子
ライター。映画評や映画ノベライズを手掛ける。

■放送情報
『トーキョーエイリアンブラザーズ』
日本テレビにて、毎週月曜深夜24:59〜25:29放送
出演:伊野尾慧(Hey!Say!JUMP)、戸塚祥太(A.B.C-Z)、恒松祐里、大後寿々花、大和田健介、祷キララ、吉田まどか、若林時英、小日向雪、紅甘、山田真歩、針原滋、芹澤興人、鈴木士、中谷竜、水澤紳吾、余貴美子ほか
監督:マイケル・アリアス、菅原伸太郎
脚本:片岡翔
原作:真造圭伍『トーキョーエイリアンブラザーズ』(小学館 ビッグスピリッツコミック)
制作:田中宏史
制作協力:ダブ
製作著作:日本テレビ、ジェイ・ストーム
(c)真造圭伍・小学館/NTV・JStorm
公式サイト:http://www.ntv.co.jp/alienbros
公式Twitter:@alienbros_ntv

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる