村上虹郎は演じる役柄を引き寄せる 『この世界の片隅に』水原哲に感じる“少年っぽさ”
俳優には、役になりきる憑依型タイプと、役を自分に引き寄せるタイプがいるが、どちらかといえば村上は後者だといえる。原作の水原はガキ大将ということもあり、わりと体格のいい印象があったが、村上は小柄できしゃな体型。それでも水原役に違和感を抱かせないのは、水原を自分の中に取り込み、それを自然体で表現しているから。以前、村上が出演した映画『武曲 MUKOKU』の熊切和嘉監督にインタビューしたとき、村上の印象について「物おじしない、屈託のない青年」と語っていたが、水原の屈託のない雰囲気を自然と醸し出しているのは、村上自身にその要素が十二分にあるからであり、それが水原というキャラクターをより魅力的にしていることは間違いない。
ちなみに、村上は声も特徴的で、彼の魅力の一つでもある。少しハスキーなのは母親のUA譲りかもしれないが、とても耳心地のいい声をしている。これから描かれるであろう水原の登場シーンはもちろんのこと、もし彼の声に興味を抱いた人がいるならば、ぜひ『武曲 MOKOKU』を観てほしい。村上はラップのリリック作りに夢中の高校生を演じており、劇中ではラップも披露しているのだが、それが驚くほどのうまさ。ここでも俳優・村上虹郎の比類なき才能を感じることができるはずだ。
※河瀬直美の瀬は旧字体が正式表記
■馬場英美
映画ライター。「ザテレビジョン」「FLIX」「朝日新聞」等で、映画&DVD紹介、インタビュー記事を執筆。
■放送情報
日曜劇場『この世界の片隅に』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
原作:こうの史代『この世界の片隅に』(双葉社刊、『漫画アクション』連載)
脚本:岡田惠和
音楽:久石譲
演出:土井裕泰ほか
プロデュース:佐野亜裕美
出演:松本穂香、松坂桃李、村上虹郎、伊藤沙莉、土村芳、ドロンズ石本、久保田紗友、新井美羽、稲垣来泉、二階堂ふみ、榮倉奈々、古舘祐太郎、尾野真千子、木野花、塩見三省、田口トモロヲ、仙道敦子、伊藤蘭、宮本信子
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/konoseka_tbs/